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「被害者面がお好きなんですね……」
高井は佐川の不幸を、静かに嘆く。無力な自分を、責め立てるように。
「か弱い女の子、って、言って……。言ってよお……。」
苦しそうに首元を抑えながら、それでも彼は気持ちよさそうだった。
高井には、どうしても彼が女性には見えなかった。
「あはは……」
女性のように笑うその声も、骨格も、何もかも全て、男性のそれであった。
「あなたの心が女の子だろうと、私は何も思いません」
精一杯高井が睨みつけて、恨み節をぶつけても、加藤はずっと、笑いながら、泣いていた。
「あなたを、信じたでしょう。……中川さんだって……。あなたのその、病的な被害者意識さえ、あなたのその、自分勝手な精神さえ無ければ……。」
高井のほうを見ようともしない。加藤はずっと、どろりと溶けた視線を中川を向けている。
「あなたって、最低……。」
高井がそう呟いたときだけ、ふと、高井と加藤の目が合った。
高井は酷い悪寒がして、強い恐怖を感じた。意地悪さと、下手な演技を混ぜ合わせて、歪んだ瞳が、高井を捕らえた。
「……もっと、可愛い服を着たかったんだけどね。仕方ないよねえ」
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