ストーカー・イン・ザ・シック

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 その日の午後七時過ぎ、加藤と中川は退社していった。仕事をだらだらやってそれを待っていた明石も、慌てて退社した。佐川と高井は既に帰っていた。  加藤の家は会社からほど近い。入社したての頃、面食いな明石は、加藤に色々話しかけた。その時に、徒歩で通勤していると聞いたのだ。  加藤と中川は、いつも通り談笑しながら二人で帰っている。後ろにいる明石に気が付く様子もない。  オートロック付きの大きなマンションの前で、加藤が足を止めた。 「ごめんな。いつもありがとう」  そう言って、中川に手を振ったのを見た。中川は駅の方へ消えて行った。  監視カメラまでついていそうな高級マンションだ。これ以上の尾行は出来ないな、と明石は諦めかけた。しかし、せっかくここまで来たんだ、何か手がかりを見つけて帰ろう、と意気込んだ。三十分ほど、向かいのコンビニからマンションの入口を眺めた。  その時だった。  マンションから、若い女性が出てきた。  明石は慌てて彼女を写真に収めた。その女性はひどく挙動不審で、どこか悦に浸ったような、変態的な、そんな表情をしていたのだ。  これが普通の女性なら、このマンションの住民だろう、で終わる。しかし、ストーカーの件が無くても看過できないほど、彼女の態度はおかしかったのだ。    明石は怖くなり、その場を後にした。
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