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「私、加藤さんのストーカー、見つけちゃったかもしれないんです」
高井が朝いつも通り出勤すると、明石が何やら騒いでいた。
「明石さん、まだやってるの……。」佐川は今日も機嫌が悪そうだ。
加藤がストーカー被害を訴えたあの日から、五人の間にはいやな緊張がずっとあった。繊細な高井はすっかり参ってしまっていた。
「佐川さん! 高井さん!」
佐川と高井の姿を見るなり、明石が駆け寄ってきた。
「これ、見てください」
明石は二人にスマホの画面を見せてきた。女性の写真だった。
「……この人が、どうかしたんですか?」
珍しく佐川が黙っているので、高井がおずおずと明石に聞いた。
「私、昨日、加藤さんと中川さんの後をつけたんです。で、加藤さんが帰った三十分後くらいに、この女性が加藤さんのマンションから出てきたんです。この人、あまりにも挙動不審だから」
「尾行、って……明石さん……」
「あくまで、調査のため、ですよ」
「どうして、そこまで……」
困り果てた高井が言葉につまる。次の瞬間、佐川が明石に詰め寄った。
「明石さん、ちょっと写真、よく見せて」
物凄い剣幕で、佐川が明石のスマホを取り上げた。そして、食い入るようにその画面を見つめた。
「綾ちゃん、どうしたの」
高井がそう呼びかけても、佐川は聞き入れなかった。
「なに、どうしたんですか、佐川さん」
佐川のこの態度には、図太い明石も驚いたようだ。
「……ありがとう」
我に返ったように、佐川は明石にスマホを返した。
「心当たりでもあるんですか?」
冗談っぽく明石が言うと、佐川は明石を思い切り睨みつけた。明石はひえっとわざとらしく言い、逃げて行った。
「綾ちゃんどうしたの」
高井がもう一度呼びかけると、佐川は不安そうな顔を向けた。
「……あの写真の人、知ってる」
「え?」
「あの女、私の元彼に痴漢の冤罪着せた女だ」
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