ストーカー・イン・ザ・シック

　東京の、小さな出版社。その飲み会の席で、加藤正樹が突然こう言った。

「ストーカーに悩まされているんです。」

　この瞬間から、この会社はおかしくなってしまった。

「おい、正樹」加藤の親友である中川良吾は、驚いた様子で加藤の顔を覗き込んだ。加藤はその発言以来、きゅっと口元を結び、涙をこらえるような表情をした。

「それ本当？」気が強く、プライドが高い佐川綾は、訝し気に問いかけた。なよなよした男は嫌い、とも言いたげだ。

「大丈夫なんですか？」佐川の隣で、心配そうに高井里奈は言った。親友の佐川が、加藤を睨みつけるのを宥めながら。

「それは大変。私、犯人見つけます！」明石美希は、目立ちたがり屋な一面があり、同僚たちも呆れている。

　この物語の主な登場人物は、この五名である。