ハニ☆トラ

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「ねえ、山門(やまと)君」  会社のちょっと怖い女の先輩――小田(おだ)あやめ先輩が僕の部屋にやってきたのは、皆が寝静まった真夜中のことだった。時計を見ると深夜二時、丑三つ時である。  仕事のできるあやめ先輩からは割と手厳しくやられることが多い。だが、プライベートと仕事はキッチリ分けるタイプなので、飲みに行くと優しい。うまく指導と切り替えてくれるので、内心では男の先輩よりもよほど頼りになると思っている。そんなあやめ先輩が、僕に何の用だろう。 「どうしたんすか? 眠れないんですか?」  僕はふすまを開ける。宿の狭い一人部屋か二人部屋か。迷った挙句一人部屋にしたのだが…… 「ん、ちょっとね」  いつもより少し色っぽい雰囲気を醸し出しつつ、先輩は浴衣姿で僕を見上げる。こんな姿はなかなか見られるもんじゃない。役得だなと思いながら彼女を中へと招き入れる。
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