マヨナカクラブ

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「ごめんごめん。遥、心あたりあるよね?」 「……あります。ワイン旗揚げやったことあります!」 「あのとき大変だったよねー。もうあんなことしないでよ?」 「あれは完全に若気の至りだから!次、次!」  ワインで旗揚げ。もちろんお酒を飲んだことなんて1度も無い僕でも、それがヤバそうな事だとは想像できる。 「続いては初投稿!ラジオネーム加湿器さん。加湿器だって面白いね!私みたいなボーカリストにとっては命ですよ。無いと生きていけない必須アイテムですよ」  僕のラジオネームが呼ばれてはっと息を飲んだ。全国から大量にメールが送られてくるから、初投稿なんてどうせ読まれないだろうと思っていた。驚きでみるみる頭が真っ白になっていく……。 「……以上、臨時ニュースでした。異世界転生してモンスター狩りまくって逮捕って、なんか遥らしいや」 「異世界転生かぁ……あたし、めちゃめちゃ憧れる。俊ちゃんは?」 「僕?僕は遠慮したいな。モンスター相手に戦える勇敢さは無いし、かといって異世界で音楽活動なんて絶対大変そうだもん。文明の利器最高」  気が付いたときには、僕が書いた投稿は読まれて、暗闇倶楽部の二人が笑いあってた。送ったメールの詳しい内容はハッキリと覚えていないけど、異世界に転生した遥さんが大暴れし過ぎて逮捕されたという内容のものが採用されたのだろう。  番組が終わったあと「メールを送るの、とっても楽しいよ!」と、楽しそうに話していた内海さんの表情(かお)が突然瞼の裏にふっと浮かんで、僕は思わず微笑んだ。
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