ショー・マスト・ゴー・オン!

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 私の好きな人は、いつだって暗闇の中、光を浴びている。  私は両手を祈るように組み合わせてステージを見上げる。照明の落とされた体育館の中、スポットライトに照らされたステージの上には、朗々とセリフを誦じる男が立っている。まだ演劇部のTシャツ姿だけれど、背後には、彼が演じる〈怪人〉――演目はオペラ座の怪人だ――の恐ろしくも悲しい狂気が透けて見えた。 (まだ文化祭の本番まで時間があるのに、佐山くんはやっぱりすごい)  息を呑む。私の好きな佐山くんは、光を受けるのにふさわしく才能ある人なのだ。裁縫が好きなだけの、ただの衣装係の私とは違って。
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