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検査のために夏休みを利用して三日間入院することになった
個室の病院だった
トイレもお風呂もすべて自分の病室にあり、手すりも完備されていた
たぶん父がすべてやってくれたんだろう
人に手伝ってもらうとき僕は必ず嫌な顔をしていたからな
一人ですべてやりたかった。
個室から出て右手で手すりをつかみ、そのまま移動する
この病院はすべての場所に手すりがあり、目が見えない人でも安全に移動できるとのことだった。
それを聞いたとき絶対に人とぶつかるだろうと思ったが、案外誰ともぶつからなかった、それもそうか部屋から出る必要性がないもんな
【この先中庭です】
頭上でスピーカーが鳴り響いた
人を感知して鳴るスピーカー本当に便利だな
手すりは途切れたが目の前の自動ドアが開き外の匂いを感じた
しっかり開くのを待ち、外に出る
やわらかい花の匂いが広がっている
どうやら花が大量に植えてあるみたいだった。
匂いに連れられ歩き出したのはいいが
初歩的なミスを犯してしまった
「どこだここ」
病院の【中】は完璧だったが外は何もなく
スピーカーの音すら聞こえなかった
すると遠くのほうでスピーカーが鳴る音が聞こえ
音を頼りに歩き出す、ただ目が見えないと思われたくないので
下を向き歩くスピードを速め出口へ向かう
そのせいか目の前にある噴水の音に全く気付かず、直進して水の中に落ちてしまった。
急いで顔を上げたが上から次へと次へ水が顔にかかり、うまく息ができない
(やばい、死ぬ)
その時急に手を引っ張られた
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