〈2月13日〉六花の心を傷付ける

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〈2月13日〉六花の心を傷付ける

 #奥多摩から帰ってから、六花とは今まで通りの関係で特別な進展はなかった。新学期の初めに、六花から誕生日に家へ来ないかと誘われた。どうしようか一瞬迷ったが、彼女の真剣な眼に押され、雪乃も一緒だと言うので承諾した。  バレンタインデーの前日が誕生日で、女の子の家に行くのは久し振りだった。気楽な気持ちだったのが、いつか緊張に変わっていた。家に着くと六花の母親に部活や学校の事を根掘り葉掘り訊かれている内に、段々落ち着いてきた。  雪乃も含めて3人でケーキと紅茶でお祝いをし、俺と雪乃がそれぞれプレゼントを贈ると、お返しにバレンタインのチョコレートをもらった。六花の部屋で話をしていると、雪乃が六花に対する思いを俺に訊いてきた。「好きだけど、好きの種類が違う」だとか「部活で気まずくなる」とか、今思うとあいまいな返事をしていた。  帰り道が一緒になった雪乃から、六花に対する俺の態度を責められた。六花の事が好きなのは確かで、彼女の気持ちも充分理解している。しかし、俺の心の中には別の思いがあって、初めて恋に芽生えた彼女の心を傷付ける訳にはいかない。それに、和葉に会った日から六花は2番目の存在になっていた。#  六花の千宙への思いは、以前に増して強くなるばかりだった。雪乃に相談しても、「しばらくは様子見かな」と言われていた。年末年始は家族でハワイに行き、その道中で、六花は母親に自分の恋する思いを打ち明けた。一人っ子の彼女と母親は、姉妹のように何でも話せる仲だった。 ☆六花☆お母さんに話して良かった。私の気持ちを理解してくれたたみたいで、千宙さんを家に呼んだらどうかと言ってくれた。☆☆☆☆☆  六花の母親の手作りの料理をご馳走になり、六花たち3人は彼女の部屋に移動した。CDを聴きながら、主に雪乃が話をしていて、そのほこ先が千宙に向いた。 「六花の気持ちに、そろそろ気付いて上げてくださいよ!」と雪乃に正面から切り込まれた千宙は、自分の今の気持ちを吐露(とろ)するしかなかった。 「六花のことは好きだけど、好きの種類が違うんだよな。何て言うか、妹みたいで、側にいて守ってやりたい存在なんだな。」と言うと、 「それは、恋じゃないの?彼氏として守ってやれば、良いんじゃないの?」と雪乃に切り返されていた。 ☆六花☆千宙さんと雪乃の話を聞いていて、自分の事なのにどうして良いか分からなかった。彼の特別な存在になりたかったが、心に入り込む事は出来なかった。☆☆☆☆☆  六花の初めての恋は、千宙に心が届かずに終わった。千宙は、青江和葉と年越しライブに行き、その後の時間を一緒に過ごした。  中学、高校時代の彼氏、彼女たちは、思春期の性的な欲望に翻弄(ほんろう)されました。 『幼い恋のすれ違い』の主人公である立松千宙と梅枝七海の二人も、それぞれ異性との関りを経験しました。高校生の彼らは性衝動に我慢ができずに突っ走ります。続きは『すれ違う恋の告白日記【中編】』になります。今しばらくお待ちください。
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