19人が本棚に入れています
本棚に追加
〈8月18日〉六花の恋心に気付く
#2週間前、俺は不覚にもゴール前の競り合いで、右足を挫いてしまった。それを一生懸命に看てくれたのが、1年のマネージャーの椿原六花だった。宿舎に移動する時には肩を貸してくれたが、久し振りに女の子の体に触れた思いがした。そう言えば、中学で付き合っていた七海と触れ合って以来だと思った。
脚のけがで練習にも参加できず、家でゴロゴロしていると、六花が心配してメールをくれた。暇を持て余していた俺は、介護のお礼も兼ねて彼女と会う事にした。彼女はタンクトップにミニスカートという服装で、体の線がはっきり出ていてドキドキした。ファミレスでご馳走した後、カラオケに行く事になって外に出た。そこで、サッカー部の卒業生の灰田潔之先輩に声を掛けられ、先輩の彼女の青江和葉さんと4人でカラオケに行った。#
立松千宙は、西王子高校に入学して2年生になった。中学から続けていたサッカー部に入り、グランドを走り回る事が生きがいだった。中学2年で付き合った梅枝七海とは、彼女の転校を機に別れたが、彼女への気持ちはしばらく引きずったままだった。高校に入って、同級生の女子から告白された事もあったが、サッカー一途の高校生活を送っていた。そんな千宙にとって、夏合宿の最中に負傷したのは痛手だった。
☆六花☆立松先輩を見初めてサッカー部に入った私は、先輩と一緒に活動できる事が嬉しかった。先輩に対しては恋とか何とかいう気持ちはなく、ただ憧れの存在だった。合宿中の事、先輩がけがをしたと聞き、居ても立ってもいられず、先輩の看護に率先して当たった。
その後の具合はどうか気になってメールすると、会わないかと返事が来た。私は男の子と一緒に出掛けた事はなく、その晩は眠れなかった。☆☆☆☆☆
六花は千宙と二人だけでカラオケに行きたかったが、思わぬ邪魔者の登場にがっかりしていた。灰田潔之は白銀大学、青江和葉は聖海女子大のともに2年生で、コンパで知り合った友人同士だった。カラオケに行って、和葉は千宙に興味を抱き、やたらとそばに寄って話し掛けていた。帰り掛けには、連絡先を交換していた。
☆六花☆折角二人だけだと思っていたのに、変な二人に邪魔をされた。しかも、あの和葉という人は、立松先輩にすり寄ってばかりいて気分が悪かった。別れ際にはスマホを寄せ合って、連絡先を交換しているようだった。灰田さんには、立松先輩が好きなのかと訊かれ、わたしは顔が赤くなっていた。☆☆☆☆☆
六花は、千宙に対する気持ちが、憧れ以上のものだとは気付いていなかった。また、初めてのデートなのに、そこで会った夏目和葉と仲良くしている彼が気に入らなかった。そんな思いを、親友の林雪乃に相談した。
「それは、六花が立松さんに恋してるってことだよ。気になるし、心配だし、他の女子と仲良くしてると嫌なんでしょ!」と言われ、六花は反論できなかった。好きには違いないが、これが恋なのだろうかと思った。
「わたしは、どうしたら良いの?告白とか、した方が良いの?」
「そんなに力まなくても良いけど、はっきりさせた方が良いよね。」
六花は雪乃に話をした後、部活に行っても千宙ばかりを目で追っていた。雪乃からのアドバイスは、機会を見つけて誘い出し、自分の気持ちを伝えろという事だった。
最初のコメントを投稿しよう!