破綻

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翌朝、目覚めた百合香は、見知らぬ天井に驚き 体を起こした途端に「あっ」と言うと、そろそろとトイレに行った。 昨夜の出来事は、本当だったと知らせる、史郎の放出物が、流れ出たのだ。 トイレから出て、浴室に行き、シャワーを浴びる。 壊れてしまったとはいえ、今迄、叔母と甥と言う間柄だったのに まだ、叔母ちゃんと呼んでいる史郎と、身体を重ねたなんて、何と言う事、、 百合香は悔やんでいたが、身体の方は、十分に満足していた。 シャワーを済ませ、キッチンで卵を焼いている史郎に 「おはよう」と言ったが、顔を見る事が出来ない。 史郎は、フライパンを置くと「おはよう」と言って、百合香を抱きしめ 俯いている百合香の顔を上げさせ、チュッとキスをした。 「あ、あ、の、、」「よく眠れたから、今日は元気だね」 「え、えぇ」赤くなって、また下を向く。 「さぁ出来たよ、しっかり食べないと、今日は忙しいよ」「、、そうね」 こんな時、何を言えば良いのか、どうすれば良いのか 百合香には、何も分からなかった。 「ほら、これ懐かしいだろ?」そう言って、目の前に置いた皿には 一つの目玉焼きを、半分に切った物が乗せられているパンだった。 それは、子供の頃、史郎が大好きで、何十回も見たアニメに出て来る 男の子と女の子が食べていた物で、パンの上の目玉焼きを 口だけで、もぐもぐと食べるのを、史郎が、男の子の真似をし 「叔母ちゃんもやって」と、言われて、女の子の真似をして食べていた物だ。 史郎に促され、あの時の様に、パンの目玉焼きを、もぐもぐ食べながら 史郎は、まだあのアニメの続きを夢見ているのだろうか。 悲しんでいる、私を慰めてくれるのは嬉しいが 昨夜の様な事は、してはいけないのだと、はっきり言わなくっちゃ。 そうだ、オロオロしている場合じゃない、これは、史郎の為なんだから。 食事が済んだら言わなくっちゃ、そう決心して食事を終えたのだが 「叔母ちゃんは、洗濯をして、俺、食器を洗うから」と、言うと 史郎は、さっさと食器を洗い始めた。 話のきっかけを失った百合香は、仕方なく、洗濯物を集めて 洗濯機に入れ、洗っている間に、風呂や洗面所の掃除もする。 綺麗にしている様でも、男の子だ、隅々まで、掃除は行き届いていない。 百合香は、ついでにトイレも掃除した。 洗濯が終わると「俺、畳むから、叔母ちゃんは出かける用意をして」 また、史郎から指示が出る。 またも、話が出来ない百合香は、じゃ、買い物が済んで 落ち着いてからにしようと、思い直して、出掛ける用意をした。 二人は、買い物の途中で、ファミリーレストランで、昼食を取り その後も、買い物をして、山の様な荷物を、百合香のマンションに運んだ。 買った物を、それぞれの場所に置くと、一気に人が暮らす部屋らしくなった それでもまだ買い忘れが有り、もう一度買い物に行って、全てを揃え 管理人の所へ、挨拶に行った。 管理人は、あの階に入居しているのは、百合香だけだと言い 「他の部屋も、ボチボチ埋まって来ると思います」と、言った。 「じゃ、今だけは、この階、叔母ちゃんが独占しているんだね」 史郎はそう言って、テラスに出て 「ほら、夕日が綺麗だよ」と、百合香を呼んだ。 「わぁ~本当に綺麗ね」街並みの向こうに沈んで行く夕日は とても大きくて綺麗だった。 そんな百合香の身体を、史郎は後ろから抱きしめる。 今だわ、百合香は決心すると「史郎ちゃん、もう、こんな事や 昨夜の様な事は、しちゃ駄目よ」と、言った。 しかし史郎は、そのままで「何で?」と、聞く。 「何でって、私は、叔母ちゃんでしょ」 「あ、俺、癖で叔母ちゃんって呼んでるけど、もう叔母ちゃんじゃ無いよね 何て呼ぼうかな~」史郎は、屈託の無い声で言う。
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