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「呼ぶのは、何でも良いけど、昨夜、、」
「いけないって、こんな事も?」
史郎はそう言うと、前に回って唇を重ねようとする。
百合香は、顔を背け、史郎の胸を両手で押して
「止めて、、誰かに見られたら、どうするの」と言った。
「誰に見られたって、平気だよ、叔母ちゃ、、あ、百合はもう独身だし
俺も独身だもん」
「そうでも、ほんの少し前は、叔母と甥なんだから、おかしいでしょ」
「全然おかしくないよ、今は違うんだから、良いじゃない。
それより、百合って呼んで良い?彼奴は百合香って呼んでたろ?
同じ呼び方は嫌なんだ」「百合?小母ちゃんで良いわよ」
「だって、もう叔母ちゃんじゃ無い」「普通の小母ちゃんで良いわよ」
「嫌だ、百合は、小母ちゃんじゃ無い」史郎は、不服そうな顔で言う。
「なに言ってるの、史郎ちゃんとは、13歳も歳が離れているのよ」
「その位の歳の差なんて、何てこと無いさ、女性の方が、うんと長生きなんだ
歳を取れば、丁度良くなるさ」
「もう~ああ言えばこう言って、とにかく、駄目ですからね」
百合香は、きっぱりと言った、すると史郎は、悲しげな眼で
「百合、、俺が嫌いになったの?」と、聞く、百合香は、はっとした。
子供の頃、一度だけ叱った事が有った、その時
「叔母ちゃん、僕が嫌いになったの?」と、泣きそうな目で百合香の服を掴み
「叔母ちゃん、嫌いにならないで、お願い」と、縋るような目で言った。
今の史郎は、あの時とそっくりだった。
言葉にこそ出していないが「百合、俺を嫌いにならないで、俺の傍に居て」
縋るような不安な目が、そう言っていた。
離婚した百合香は、自分を置いて、どこかへ行ってしまうのではないか
だから、近くのマンションに、住まわせた。
あんなに酷い目に合わせた二人の息子だし、昨夜の事も、怒ってるみたいだ
どうしよう、どうしよう、そんな史郎の気持ちが分かって来た。
今までの元気は、その不安を消す為の、空元気だったのだ。
「馬鹿ね、史郎ちゃんを嫌いになんか、なる訳無いでしょ」
その百合香の言葉に、史郎の顔は、ぱっと晴れた。
百合香の身体を抱くと、自分の頭より高く持ち上げ
「やっぱり、俺の事、好きなんだ」と、子供の様な笑顔になる。
「史郎ちゃんは好きだけど、昨夜の様な事は、もうしないでね」
これだけは、しっかり言わないとと、百合香は念を押した。
「うん、百合がそんなに嫌なら、もうしないよ」
意外にあっさり承知したので、昨夜は、あまりにも落ち込んでいる私を
どう慰めて良いか分からず、あんな暴挙に出たが
今まで通り、甘えたい伯母の傍に居たいだけなんだと、百合香は、ほっとした
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