義理の姉、基子

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そんな慶次郎に、今日も感謝しながら、桜と会い お洒落なレストランでステーキと、流行りのスイーツを食べながら 桜と家族の話をする。 「今年の夏は、集中豪雨で野菜が駄目になって 収入も三分の一しか無かったの、これからも、こんな事が多くなりそうだから 天候に左右されない、ハウス栽培をしたいって、うちの人が言い出してね 私も賛成したんだけど、JAから借りられる、お金じゃ足りなくて、、、 お姉ちゃん、助けて貰え無いかな~」桜は、申し訳なさそうな顔で言った。 「助けてやりたいけど、うちの家計は、主人が握ってるからね~ 私の一存では、どうにもならないわ」百合香も顔を曇らせる。 仕事柄だと思うが、慶次郎は、家計の全てを自分が握っていて 百合香には、食費と光熱費と、雑費だけの金額を渡し 足りない時は、追加で貰うと言う生活だった。 だから、慶次郎の収入がいくらなのか、貯金は出来ているのか等 全く知らされる事は無かった。 「お前に、要らぬ心配はさせたく無いんだ」と、慶次郎は言うが 自分の事を、信用してくれていない様で、ちょっと悲しい。 「一応言ってみるけど、いくら位?」「300万なの」 「そう、結構大金だよね」 「うん、、お兄さんからは、毎月助けて貰ってるし、やっぱりこれ以上は」 桜は、諦めた顔で、今から知人の所へ行くと、立ち上がった。 百合香は、支払いを済ませ、残った一万円札を、桜に握らせ 「これで、子供たちに、お土産でもを買って帰って」と、言った。 「有難う、じゃ、返事待ってるね」お互いに、多分駄目だろうと言う顔で 桜と百合香は別れた。 家に帰ると、慶次郎は仕事に行った様で、車は無かった。 庭先の椅子に腰かけて、ぼーっとしていると 「あら?いつ帰ったの?」と、基子が顔を出し 「何か有ったの?」と、顔を覗き込む。 「いえ、別に」そう言ったが「あら、何も無かったって顔じゃ無いわ まさか、ご両親の具合でも悪くなったとか?」 「いえ、そうじゃ無くて、妹が、、」「うん、うん、妹さんが?」 仕方なく、全ての事を話した。 すると基子は「直ぐ、妹さんに電話して、まだ東京にいるんでしょ どこかで落ち合いましょう」と、言う。 「えっ、え?」どうしてと、思いながらも、急かされて桜に電話をしていると 「落ち合う場所が決まったら、タクシーを呼んで」そう言うと 自分もどこかへ電話をして「直ぐに取りにまいりますから」と、言っている 桜は、知人とも別れ、デパートへ寄って土産も買って、駅に向かっていた。 「タクシーで行くから、タクシー乗り場で待ってて」 そう約束し、タクシーを呼ぶ。 いったい、基子は何をするつもりなのだろう、桜に会ってどうするのか さっぱり分からなかったが、二人は、やってきたタクシーに乗った。 基子は、駅に行く前に、ちょっと銀行へ寄ってくれと、運転手に言った。 まさか、桜にお金を、、その考えは、当たっていた。 タクシーに百合香を残し、一人銀行へ行った基子は 直ぐに紙袋を持って出て来て、タクシーに乗り 「これ、妹さんに渡してあげて」と、持っていた紙袋を百合香に渡す。 中には、帯封の付いた札束が、三つ入っていた。 「いけません、こんな事をして貰う訳には」驚いて、返そうとしたが 「良いの、良いの、お金は使うために有るのよ 使わなければ、ただの紙切れだわ」と、けろりとした顔で言う。 「でも、私、返せる当てが有りません」 「あら、返して貰おうなんて、思っていないわ 百合香さんには、私も、史郎も、いつもお世話になるばかりだもの。 私には、こんな事位しか出来ないけど 大好きな百合香さんの、お役に立ちたいの、ね、快く受け取って」 基子は、優しくそう言って、百合香に紙袋を持たせた。 百合香は何度も断ったが、最後には、父親に似て押しが強い基子に負けて 「では、遠慮なく使わせて頂きます」と、貰ってしまった。 駅に着いたタクシーの中で、基子は 「私、待ってるから、早く妹さんを安心させてあげて でも、私からだって言わないでね、妹さんが気を使うから」 基子がそう言うので、百合香は、待っていた桜に 後で詳しい話をするからと、お金を渡した。 桜は、もう諦めていた分、喜びも大きく「お姉ちゃん、本当に有難う」と 涙を浮かべて、お礼を言った。
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