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その百合香は、史郎とドライブを楽しんでいた。
高速を降り、暫く走ると、お洒落な街並みが続く観光地に着いた。
そこから、さらに緩い坂道を上る。
緑の木立の中に、バンガローやコテージが点在している。
その一番奥に、二人が泊まるホテルが有った。
木造の二階建てだ、車を降りると、爽やかな風が吹き抜け
蝉の声や、小鳥の声が賑やかだった。
二階の部屋に荷物を置くと「何か食べよう」と、一階のレストランへ行く。
レストランは、ビュッフェスタイルで、もう、5,6人のお客が居た。
史郎は、百合香を椅子に座らせると、さっさと百合香の分を取って来る。
百合香の好物は、よく知っている「これで良い?」
「有難う、海老の天ぷら、美味しそうね」史郎は、自分の分も取って来た。
「まぁ、お肉ばかりね」「うん、育ち盛りだからね」
「え~っ、お野菜も食べたら?」「野菜は、百合が僕の分まで食べるでしょ」
「なに言ってるの、本当に、何時まで経っても」
「困ったちゃんね~」史郎は、百合香の口真似をし
「頂きま~す」と、ローストビーフを口に入れた。
次の、ステーキを口に入れようとしている史郎の口元に
百合香は、ブロッコリーを持って行き「はい」と、促す。
パクッと食べた後「止してよ、子供みたいな事、笑われちゃうよ」
と、史郎は文句を言う「じゃ、自分で食べなさい」
「ちぇっ、しょうがないな~」そう言いながら、史郎は野菜も取って来て
肉と交互に、モリモリ食べる、その食べっぷりに、百合香は目を細める。
食事の後は、ホテルの周りを散策した。
「あ、もうコスモスが咲いてるわ」「本当だ、綺麗だね」
まだ、五分咲きだったが、秋を代表する花は、渡って来る風と
遊んでいるように見えた。
山影を回ると、あちこちにハーブが植えられていて、ここの風は
ハーブの良い香りを運んでいた。
その先は、キャベツ畑だった「高原野菜だって」
辺り一面に、キャベツが育っていて、もう収穫出来そうだった。
「うさぎが居たら、喜びそうね」「人参畑の方が、喜ぶかもよ」
そう言った史郎は「史郎ウサギは、キャベツや人参より
こっちが大好きだよ」と、言うと、素早く百合香の唇を奪った。
百合香は、それに応えた後「こんな所で、駄目でしょ」と
めっという顔で、たしなめたが
それからも、あちこち歩く先々の、木の影や、寝っ転がった草原などで
史郎は、何度もキスをする。
「もう~史郎ちゃんったら」困った顔で、百合香はそう言うが
その度に、百合香の心の痛みは
少しずつ消えているんじゃないかと、史郎は思っていた。
夕食と、風呂を済ませて、テラスに出た史郎は
「わぁ~百合、来て」と、叫んだ。
百合香が行ってみると、空一面が、星で埋まっている。
「わぁ~凄い星だね~」うっとりと見ている百合香を、後ろから抱きしめ
「俺、今、一番幸せ」と、言った史郎は、百合香の身体をくるりと
自分の方に向かせ、長いキスをし、そのまま抱え上げて、ベットに運んだ。
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