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お互いの舌を絡め有っただけで、もう史郎は、百合香の身体を
自分の熱い物で貫く。
百合香は「ゆっくりよ、ゆっくりね」と、上ずった声で囁く。
史郎は、百合香にリードされながら、百合香の変化を見逃さない様に
早く動かしたいのを我慢して、ゆっくりと腰を動かす。
「あ、あ、ぁ」百合香の切ない声が上がった。
「百合、うんと喜んで、そして痛みを忘れて」
史郎はそう願いながら、喜びの頂上へと連れて行く。
そのまま右手を伸ばして、百合香の胸を愛撫する。
百合香の中の史郎の物が、ぐっと締め付けられ「う、ぅ、う」
今度は、史郎が声を上げ、揺する動きが早くなった。
「あ~~~っ」甘く切ない声を上げ、百合香が昇りつめ
ガクッと体中の力を抜いた。
温かで、柔らかな壁が、ドクンドクンと波打つ。
史郎は、それを感じてから、一気に自分の全てを放出した。
「ぁ~~~っ」百合香は、史郎の大きな波と、その温かさに
喜びの声を、小さくあげた。
そのまま動かず、お互いの波が収まるまで抱き合う。
百合香は、心の中で叫ぶ
『私の傍に居て、このまま離さないで、ずっと一緒に居て』
しかし、それは言ってはいけない、史郎の将来に影を落とす。
暫く史郎に付き合ったら、そっと姿を消そう。
史郎も思う『百合を癒しているつもりなのに、俺の方が癒されてるな~』
自分が、喜一郎の子供では無くて、慶次郎の子供だった事は
史郎にも、ショックだった、だが、憎い二人の息子なのに
百合香は、自分の全てを受け入れてくれて
心も身体も、優しく包み込んでくれる、史郎は言った。
「百合、今迄も大好きだったけど、今は、もっと大きくて深い好き、、
大好きって言うだけじゃ足りない好き、、、百合、愛してる」
そう言って、キスを受けた百合香の目じりから、涙がつぅ~っと流れた。
慶次郎は、家を処分し、基子が購入した新築のタワーマンションの
最上階の部屋で、住む事になった。
基子は、長年の夢が叶い、最愛の慶次郎との新婚生活に、浮き浮きしていた。
お気に入りの家具を揃えたり、仕事から帰って来る慶次郎を迎えたり
楽しい毎日の筈だったが、その浮き浮きも、一月ほどで、色あせて行った。
誰にも遠慮しないで、二人だけで楽しめる夜の生活が
思っていたより、楽しくないのだ。
会える日を待ち焦がれたり、誰かに知られないかと、ヒヤヒヤしたり
その限られた時間を楽しむからこそ、最高の喜びが有ったのに。
それが無くなった今は、刺激も何も無い、ただ体を合わせるだけで
前ほど燃え上がらず、味気なさが残る。
慶次郎は、もっと面白くなかった。
低血圧で、朝が弱い基子は、それでも舞朝起きて
トーストを作ってくれていたのだが、それも、ほんの二週間ほどで
直ぐに、ベットの中から「行ってらっしゃい」と、言う様になった。
毎朝、炊き立てのご飯に、お味噌汁、玉子焼きや、焼き魚や納豆と言う
美味しい朝食を済ませると、アイロンが掛かったシャツにスーツ
ピカピカに磨かれている、靴を履き、靴ベラを百合香に渡して弁当を貰う。
そんな事は、当たり前だと思っていたが、それが何処にも無くなり
前の日に脱いだままの靴を、自分で磨き、弁当も無く家を出る。
百合香が、今までどれほど自分の為に、細かな心配りをしていたか
ようやく、気が付いた慶次郎だった。
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