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「ねぇ」
「なんだよ」
私は隣に立つタキシード姿の男に話しかけた。晴天に恵まれて今日のこの日を迎えられたことを嬉しく思う。幸せとしか言い表し用のないような、そんな気持ちが私を包み込んだ。
「何でもないわ。私を幸せにしろよ。」
私は私らしい、少しぶっきらぼうな口調でそう言った。
「アホか。当たり前だろうが。」
彼もまた、彼らしく返してきた。
暖かく、そして、柔らかな春の日がガラス越しに私たちを照らす。その日が作り出した影は、神父の一言で重なった。
「では、誓いのキスを。」
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