沈黙は重かった。

1/1
前へ
/12ページ
次へ

沈黙は重かった。

コンコン レッスン室の扉が叩かれる音がした。 「今、ちょっといいかな?」 楓さんの声だった。 「はい、なんでしょうか」 私は、汗をぬぐった。 「優雨の事、少しわかったんだけどね。 あれ以来、仕事もしてないらしい。」 しばらく沈黙が続いた。 私は、うつ向いた。 「仕事していないならどうやって生きているんですか?」 「わからない。だけど、優雨は生きている。」 だから、、なんですか? 生きているから良いとかって言うつもりですか? そこから会話は続かなかった。 長く、重い沈黙は破れなかった。 いつの間にか楓さんはいなくなっていて、 私だけが取り残されていた。 滴り床に落ちる汗をみていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加