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男子高校生の戦い
「戦争だ」
「はい?」
「だから、戦争が始まるっつってんだよ」
聞こえなくて聞き返したわけではないのに、千明先輩は律義にもう一度、さらにわけがわからなくなる返事をしてくれた。
いつも通り、この大魔王先輩に拉致されたわたしは、いつものように先輩の妹が入院している病院に行くのかと思いきや、見知らぬ男子高校生二人と対面していた。
「わかります、千明先輩! なんてったって今日の相手は……卵ですもんね!」
かたや、人懐こそうな顔をしているわりにはガタイのいいわんこ系。
「でも、今日は、俺なんかが役に立てるでしょうか。特売日って言ったら顔色変えた主婦たちの戦場じゃあないですか。そんなところに幼気な男子高校生が迷い込んで蹴飛ばされたりしないでしょうか」
かたや、始まる前からネガティブモード炸裂の、まったく幼気ではない、縦だけ妙に成長したひょろながごぼう系。
「おい。タケは始まる前から弱気なこと言ってんじゃねぇよ。それからタロウは、やる気があるのはいいけどそろそろ俺の言うことを聞け」
そんな二人をまとめている、ように見えるのが、わたしの学校の中で一番のイケメンと言われている、千明先輩。しかし顔が良いだけでただの不良だ。まばらな金髪に綺麗すぎる顔はアンバランスだった。おまけに口の悪いドケチの性悪ときた。知れば知るほどこの人が女の子から騒がれる理由がわからない。
「大丈夫です、千明先輩の言うことは肝に銘じて頑張ります! ところで、そちらの方はどなたですか?」
わんこ系男子が、千明先輩の後ろに隠れているわたしを食い入るように見つめながら言った。
「俺の下僕」
「ちがっ、」
「なるほど、本日の助っ人さんですね。よろしくお願いします。俺のことはタロウって呼んでください!」
わたしが否定する隙を与えることなく、わんこ系男子もとい、タロウは人懐こい笑顔で右手を差し出してきた。
わたしも、千明先輩の後ろに隠れるのをやめて、おずおずと彼の手を取る。
「俺のことはタケでいいよ。今日はよろしくね」
ごぼう系男子、タケも人当たりのいい笑顔を浮かべた。
「えっと、結城まひろです。戦争とか、助っ人とか、よくわかんないんですけど、よろしくお願いします……?」
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