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「さて、透明化してても僕達には丸見えだよ。出てきなよ」
カイロスが静かに言うと、ふっと現れた人物が1人。
長身でスラッと手足が長い青年だ。
髪型は黒髪の短髪で清潔に保たれたスーツを着ていた。
「やっぱりバレてたんですね。流石は神様です」
ニコニコと笑顔で物怖じしない。
爽やかな笑顔。
しかしイレギュラーなこの状況に爽やかな笑みを浮かべられるのは常人ではない。
一部始終を見ていたアレらを冷静に受け止められる事は普通ではないはず。
何故ならここは『魂しか入れない場所』だ。
ただし、自分自身がイレギュラーを経験していれば別。
確か…彼はヘージくんの幼馴染みだったかな。
カイロスはぼんやりと眺めながら彼を見る。
「カイロス様にお願いしたい事があります。俺も平次について行きたいです。お願いします。どうか俺も平次が行った世界に行かせて下さい」
カイロスはヘージの幼馴染みを見つめる。
はて、彼は死んだのだろうか。
そもそもここには自分達が招かないと来れない。
なのに何故彼はいるのか。
しかも『透明化』使って…
地球人には出来ないのでは…
いくら神でもカイロスの能力の範疇ではない。
この手の調べモノはクロノスだ。
クロノスに目線を送る。
「お前、異世界転生者か…。魂も意外と情報が入り組んでて俺でも解析に時間かかりそうなんだが。」
「思ったよりお早い解析ですね。神様の玩具になった事のある身なんで仕方ないですよ、先輩」
クロノスはヘージの幼馴染みを睨む。
まさか先輩と呼ばれたからか…
スクルドが冷静に言葉を結ぶ。
過去にあった事象についてはスクルドは発言を赦されていた。
「なるほど。元勇者様でしたか。それで神様の玩具とは何の事でしょうか」
スクルドは心当たりがあった。
戯れが好きな神、ロキの仕業ではないかと。
同郷の神業をしているロキ以上に物事をややこしくさせる輩はいない。
本人は全く自覚がないだけに話しても一向に直す気がないのだ。
「俺、前々回ヘージが勇者だった時に魔王だったんだ。勇者の時の記憶が残ってる状態だったから責任感じて前回神の納得する形になった報酬にヘージの近くで記憶持ったまま転生する事を叶えてもらったんだ。魂半分にしてしまった詫びをと思って……」
なんと。
あの時の魔王か。
3柱とも納得した。
あの魔王はどうも魔王らしくない。
魂を分裂させる魔法。
元勇者の記憶持ちならば出来なくはない。
ある意味勇者と魔王を経験している彼であれば、オジサンが目を付けている可能性がある。
ふむ…ヘージくんのツレになるならボディーガードには適任。
ヨシコさんは別に護衛な訳じゃないしね。
「わかった。護衛で君をヘージくん達の所に送ろう」
そうしてカイロス達3柱はヘージの幼馴染みを同じ世界へ送り出した。
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