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警備隊の兄ちゃんに話し掛けてみると、色々話をしてくれた。
ウィンスダー侯爵家の御子息との事だ。
僕が10歳だから、2、3歳?いや…もしかしたら5歳位違うのかもしれない。
ハーヴェイ・フォン・ウィンスダー侯爵令息。御嫡男で、次期侯爵だそうだ。
金髪碧眼。色白の美少年…。
ま、ヘイジーで見慣れてるけど。
ヘイジーは派手系美少年、ハーヴェイ様は優雅な美少年ってとこかな。
うわぁ~…遊びたい盛りだろうに、何だか気の毒だな。 生まれた環境で生きる道を決められちゃう。懐は暖かいけど自由がない。
生まれた瞬間、責務を背負わなくちゃならない。一生責務に拘束されるってキツいな。
うん、絶対息苦しいだろうな。
僕は今、憐れみの目できっと見てしまってる…
警備隊の兄ちゃんは意外な反応をした僕の頭を撫でてくれた。
「君、変わってるね。普通なら領主様の息子さんなんだってキラキラした目ではしゃぐ所だよ」
微笑みながらずっと頭撫でてくれてる。
僕の髪はヘイジーみたいな柔らかい髪じゃないから痛いと思うんだけど……
段々こそばゆい気持ちになってくる。
「兄ちゃん、いつまでするの?」
不満な顔をして見上げると警備隊の兄ちゃんはごめんごめんと笑いながら手を離した。
その時視線を感じてその方角を見たら坊ちゃんが僕達を見ていて目が合った。
「この地区の子供?」
いや、坊ちゃんも子供だよね。
まぁ、目が合ったから挨拶しないとね。
お偉いさんの子供だし。
「こんにちは。はじめまして。この地区に住んでるベルゼンと申します」
そう申し出てお辞儀をする。
この世界のお偉いさんへの挨拶は良く分からないけど、丁寧にすれば平民で10歳の自分は及第点貰えるかなと思った。
なんせこの街の待遇を知れば思わずにはいられない。
「ベルゼンか。歳は?」
「今年10歳になりました」
ニコニコして答えた。
ちゃんと話せてるよね。少し緊張する。
侯爵様ではないけど次期当主の坊ちゃんだし、背中に少し汗が出てるのがわかる。
落ち着いてる坊ちゃんだけど、いきなり理不尽に断罪するような我儘坊ちゃんだったらどうしよう…
「ハーヴェイ・フォン・ウィンスダーだ。歳は13歳。よろしく」
微笑みながら名乗ってくれた。
つーか、僕の方から名乗って良かったんだろうか…
不安げに兄ちゃんを見上げるとニコニコしてる。
ま、いっか。間違ってたら警備隊の兄ちゃんが何か教えてくれただろうし。
僕は貴族じゃない平民。知らなくて当然。開き直るしかない。
えっへん。
「あの…この街に何かご用件で来られたのですか」
気になって質問。
一応挙手してから質問してみました。
「この街の視察。ウィンスダー領が意外と広範囲だから家族で分担してる」
若いのにもうお仕事なんですね。
ますます気の毒に思えちゃう。
日本ならテーマパークではしゃぐ位の年齢だよ、僕達は。
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