12人が本棚に入れています
本棚に追加
ハーヴェイ様は、何故か僕の顔をじっと見つめている。
顔というか目を見ている。
はて?何で?
ハーヴェイ様の目は翡翠のような神秘な輝き。
吸い込まれそうな宝石の目に、平凡な僕の顔が写す。
何かを見通すような、見定めているような…そんな瞳。
「君のような表情する子は珍しいね。大人なら何人かに1人はいるんだけど、子供では君がはじめて。子供にはいないんだ」
ハーヴェイ様は苦笑いをして手を差し伸べてきた。
「僕と友人になって欲しい」
この世界では貴族と平民での握手は認められているのだろうか。
悩んだ末警備隊の兄ちゃんの顔を見ると頷いた。
い……いいのか。
僕は差し伸べられたハーヴェイ様の右手に自分の右手を差し出した。
本来なら力仕事をしないはずの手。
意外と皮膚の皮が厚いし指の下の掌にはマメみたいなゴツゴツしたのが確認できる。
剣だこかな?何かを握って出来たと思われる何か。
そう言えば元カレが学生時代剣道部だったらしいけど、その時の手に似てるかも。
勿論手の大きさは違うんだけどね。
そう思ったら剣だこにしか思わなくなった。
無意識に握手後剣だこを触ってたらしい。
ハーヴェイ様が固まってる。
「あ、すみません。たこが気になって…」
ものを運んだり綱を引いたり書き物をするのにできるたこではない。
平民にはあまり縁のない剣だこ。
僕は知ってるけど、思わず元カレにしてた仕草を無意識にハーヴェイ様にしてしまうとは不覚。
ガックリしてる僕にハーヴェイ様は失敗して落ち込んでいるように見えたからか話し掛けられた。
「君たちにはあまり縁ないものだから珍しかったのかな」
怒る気はなさそうな雰囲気。良かった、怒らないでいてくれた。
「自分のたこと場所が違うなって思って…申し訳ございません」
僕の指にはいつできたかわからないペンだこがある。神様達、すごい身体にしたなーって目覚めた時に思ったんだよね。因みにヘイジーにはない。
「ペンだこか。凄い頑張って覚えたんだね。僕にも剣だこ程じゃないけどあるよ」
掌を開いてハーヴェイ様が見せてくれる。
「折角文字を覚えられるんですから必死になりますよ。近所の兄や姉分の人達や大人からは他所じゃ学べないと聞いてましたし。僕生れがこの地区で本当に幸せだし感謝してます」
これは本心。
神様達が言ってた。時代は中世位だと…。
日本だけじゃなく、海外だって中世だと識字率は壊滅的だ。普及してるのが当たり前なわけじゃない。
それを証拠に、商売には貨幣は存在するものの平民では物々交換による等価交換だ。
最初のコメントを投稿しよう!