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貨幣自体が高価なはず。
識字率に加えて簡単な計算もこの街では学んでいた。出来なくても生きてはいけるんだろうけど、文字の読み書きと計算を知っているなら分からないよりは快適になるし自分の為になる。
「この地域では貧富関係なしに文字も計算も学べます。教師のような人からではないけれど、分かる人から教えて貰ってるんです。とてもありがたい事です。僕は近所のお姉さんから教えて貰いました」
地球での学校のようなものはないけど、遊びの延長上に学びがあるのは意外な事だった。
学びを遊びのひとつにすると子供は楽しく覚える事ができるし。
たまにヘイジーのような態度を取る子がいるけど、そのような子は近所の子供達が見放さず面倒を見るようにして孤独にしないんだ。
周りがほっとかないようにしている。
心が豊かだと他人に優しくできる。
心が豊かなのは環境が良いから。環境を整えるのは文明が進んだ前世でも難しいのにこの地域は本当に出来すぎている。
余計なコンテンツがなくてシンプルだから古き良き時代、なんだろうか…。
スマホなくて不便とも今は思わない。
「案外田舎暮らしも悪くないな」
辺境と言うからには王都からは離れている。
王都のイメージは都。人が沢山集まるんだろうな~。
僕は思わず失言していた事に気付かなかった。
ハーヴェイ様は聞き逃さなかった。
「ベルゼンはこの地域の出身じゃないのか」
ヤバッ。声出しちゃってたかっ。
「あれ……僕何か言ってましたか」
ニコニコしてすっとぼけとこっ。
面倒になるし。
あー、ハーヴェイ様の視線が痛い。
警備隊のお兄さんに話し掛けよっと。
「兄ちゃん、このお仕事長いんですか。かっこいいな…。僕も仕事したい。どうすればなれるのかな」
心にもない事をそれらしく言ってみる。我ながら天才子役並の演技だ。警備なんて僕には無理だ、無理。でも子供には十分興味沸く話かなと思った。近所の子供も憧れてる子いるかもしれないから聞いておくのも悪くない。
「あー。警備隊?警備隊なら守備隊と同じである程度の年齢になったら志願出来るぞ。役職者との面談があるけど。実技はない。近衛や騎士団とは違うしね。因みに俺は騎士団に落ちて警備隊になった。つーか、何かお兄さんって言われてると照れるな。俺はマーティ。実はこの辺りの出身。」
マーティ兄ちゃん、実はこの街の中央通りにある花屋さんの息子さん。
花屋さん継がなかったのが不思議で聞いてみたら「花に囲まれてると鼻水止まらない時があって痒くて落ち着かない」らしい。
まさかのアレルギーか…
そのせいで店を継げず妹に譲り、騎士団に落ちて警備隊に入ったらしい。
まぁ、ゴツい兄ちゃんが花売るより妹さんの方が花屋さんは似合うよね。
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