続・HHL~ティーンエイジャー・ゼン~

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「元気だったか」 ハーヴェイ様が僕を気にかけてくれる。 優しいなぁ、おい。どこの王子様だよ、まったく。 「はい、病気もせず元気に過ごしてました。ハーヴェイ様、以前よりお声が低くなりましたね。声掛けられた時お顔見るまで分かりませんでした」 うん、ホントこれな。 顔見たら分かったというか思い出したわ。 「ベルゼンはまだ声が高いな。少し前までなかなか声が出せなくてもどかしかったけどな。そのうちベルゼンも経験するよ」 微笑むハーヴェイ様、眩しすぎるっ。 お貴族様に気軽に話し掛けて大丈夫なのは ここの土地柄とハーヴェイ様の意向があるからと自分でも理解している。 他なら無理難題だろう。 が特殊なんだ。 「いつもこの辺りでベルゼンと会うね。家近くなのか」 「そうですね。近くと言えば近くかもしれません」 ウソです。11歳の子供にしてはちょっと遠い。 今日はスージィ姉さんのトコに遊びに行く途中だったんだ。 初めて来店してからちょくちょく小遣い稼ぎにくすい作りしに遊び行ったりしてた。 だって、スージィ姉さん大好きだもの。 来年からは働き出すし、なかなか会えなくなっちゃうし大人になったらなったで気軽に来れなくなるしね。 「ハーヴェイ様は今日おひとり様ですか。護衛……の方はいませんね」 マーティ兄ちゃんいないし、いくら平和な領地でも護衛いないなんて…… 「今日から数日は学校も仕事もなかったから遊びに来たんだ。プライベートだよ」 なんですと。 スージィ姉さんの店の方角を向いた顔を恐る恐るハーヴェイ様へと向ける。 「遊びに来たんですか?」 苦笑いを思わずする自分に向かってハーヴェイ様は眩い笑顔をされる。 眩しいっつーの! あぁほら、言わんこっちゃない。 通行人の女性の方々が立ち止まって惚けてるじゃんかっ!! この無自覚キラキラ王子様、どうにかしてよ。 ヘイジーみたいなまだ無邪気な子供だったら許されるけど、もうそろそろ自覚してよ。 「貴族って今まであまり不便って思ってなかったけど、案外面倒だな。自由に友人の所に遊びに来れない」 寂しそうに愚痴るハーヴェイ様にはちょっと同情しちゃうけど。 仕方ないな。 今日はとことん付き合ってみよう。 「ハーヴェイ様、数日はこちらなんですか。泊まる所はありますか」 「あぁ。領主の屋敷(ウチの家)に数日滞在するよう手配はしてある」 「何時まで大丈夫なんですか」 「暮れるまで」 「分かりました。今日はとことん付き合います」 僕の発した言葉でハーヴェイ様は目を見開いた。その後はにかみながら言った。 「ありがとう」 眩しすぎて直視出来なかったけど、嬉しそうな雰囲気は感じたから良かったと言うべきだろうな。 さて、予定してなかったハーヴェイ様の訪れにヘイジーやイーサンにはどうしようかなと考えるのであった。
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