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「僕、これから花屋に行くとこだったんですがハーヴェイ様一緒に行きませんか」
いくらハーヴェイ様でも今日の予定を変えるつもりもないので聞いてみた。
「あ、あぁ。別に構わない。同行しよう。それと、なんだ。話し方も普段通りで構わないし呼び方も愛称でいい」
ちょっ…一気にハードル下げてくるとは。
思わず顔が引き攣る。
「愛称ですか。よく分からないんですけど…僕ならベルとかゼンとかみたいな感じですかね。両親からはベル、友達からはゼンって呼ばれてます」
「そう。僕には様はいらない。ヴェイでいいし話し方も普段通りで良い。僕は領地ではこの話し方だけど人がいる時は学園での話し方に変えるつもりだ」
「分かりました。では僕の事はゼンでいいです。敬語はそのうち…」
距離のとり方が難しい。
時間かけないとこの世界の常識が分からないからね。
慎重にいかねば。
いつもの通り道を通ってスージィ姉さんの店に向かう。
違って見えるのはヴェイがいるから。
小走りで通る道。
今日はヴェイに合わせて歩いている。
「お、ゼンちゃんか。今日も花屋かー」
商店街でお店出してるおじさんが話掛けてきた。八百屋のおじさんだ。
「はい。今日友達も一緒なんです。というか、僕男なんですからちゃんって呼ばないでよ」
「あれ。そうだったか。だが男だってちゃん呼びのやつ沢山いるだろ。織物店のヤッちゃんとか…」
「あの方は自ら『ヤッちゃんって呼んで』って普段から言ってるじゃないですか。自分で望まれているんですー」
織物店のヤッちゃんさんは名前呼びにくいだろうからと言ってくれてるんですよ。
僕はブツブツ八百屋のおじさんに言った。
ヤッちゃんさんの名前はヤコブさん。前世じゃ有名な病名だったなぁ。
子供にはブの発音が難しい。優しくて穏やかで子供好きなヤッちゃんさんは子供に好かれているし、呼びやすい名前で呼んで欲しいんだろなぁって思う。
「あれ。何処かで見た事あるような…。何処の子だ」
ギクッ…
ヴェイがいたのすっかり忘れてた。
さっきから静かにやり取り見てたのか…
「ごめん、ヴェイ。思わず話し込んじゃった」
見た事あるでしょうよ。
領主の息子さんですもの、オホホホ。
背中に汗かきながら笑顔を張り付けてる。
「気にしないよ。あまり見たことないゼンが新鮮で。今のやり取りみると年相応なんだね」
なんか、ジジ臭い事言ってるよ…
「年相応って…ヴェイと数年違うだけじゃん。今は差があるけど年取ったら数年なんて差がなくなるよ。まだ今は11歳だけど」
20歳超えたらそうそう変わらないんだからね。
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