506人が本棚に入れています
本棚に追加
保冷バッグをぶら下げながらトボトボと歩いて行くと門から秀也君の車が出て来た。
すると私の横で止まったかと思うと後部座席の窓が開いた。
「今日から出勤か。」
秀也君が声を掛けてきた。
「うん。あっ、そうだ。今さっき由紀乃さんと途中で会ってこれ渡して欲しいって。生物だから冷蔵庫に入れておくね。」
「由紀乃さんまた…?」
私をじっと見つめる秀也君。
「新谷何か言わ、、」
「秀様そろそろ出発しても宜しいでしょうか?お時間が。」
「あ、あぁ…新谷またな。」
窓が上へと閉まっていくのを私はとても切ない想いで見届ける。
まるでこっちの世界と二人の世界を分けられてしまったみたいに。
車が走り去って行く。
エンジンの音がやけに胸に響いた。
その日は目の前にある仕事をどんな気持ちでこなしていったのかさえ覚えてはいなかった。
一つ覚えているとしたら休み明けだというのに信じられない疲労感だけが残っていたという事だった。
帰り道。
早く帰って横になりたくてなんとか残りの体力で駅に向かう。
改札を抜けて階段を上がると丁度電車が到着していた。
電車に乗るなり開いている席を見つけ項垂れる様にして座りこむ。
体が疲れてるんじゃ無い。
私の中が悲鳴をあげているんだ。
そして直ぐに目を閉じて暗い空間へと入って行く。
○○駅~。
ん?
あぁ…降りないと。
頭がフラフラする状態で皆が降りていく一番最後、ドアが閉まるギリギリでホームに足がついた。
我先にと階段を駆け下りて行くサラリーマンや学生の波がとっくに引いた頃、私はようやく階段を降り始めた。
改札を通りぼんやりと前を見ながら歩き出したその時だった。
私と彼は同じタイミングで目と目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!