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「城田君。」
「新谷。」
偶然だった。
そう言えば離婚したお母さんの家が割と近いとか話していたっけ。
城田君はこちらに近づいて来た。
「いつかばったり会うんじゃないかと思ってはいたけど本当に会ったな。そろそろ連絡しようかとしてた所だったし。」
「本当偶然でびっくり。お母さんの家に行ってたの?」
「そうそう。新谷さ飯食った?」
「ううん。まだ。」
「一緒にどう?」
「あ、うん。」
さっきまで早く帰って休みたいと思っていたのに城田君と話をしていたら不思議とスッと少しだけ楽になっていくのを感じて私は迷うこと無く返事をしていた。
告白の返事の事などその時は頭には無かった。
駅前には人通りも多いせいか飲食店も沢山ある。
城田君の少し後ろを歩く私。
私達は少し歩いて手頃な店を見つけそこに決めた。
店の前に着くと城田君は扉を押し開けて私に目線を落としながら。
「どうぞ。先入って。」
扉を手で支えながら先に店内へと私を促してくれた。
「ありがとう。」
私は吸い込まれる様にして何の躊躇も無く入って行く。
つけ麺の店で各々一つずつ選び、城田君が瓶ビールも頼んだのでグラスを二つもらって私も少し呑む事にした。
先に瓶ビールが来たので先に城田君のグラスに注ぎ入れた。
乾杯をするとあっという間に城田君は呑みほしてしまった。
「良い呑みっぷりだね。」
「喉渇いてて。」
つられて私も全部呑み干してしまった。
「っはぁ…なんか城田君見てたら美味しそうに呑んでたからつい。はぁ。なんかすっきりした!」
「笑ったな。」
「え?」
「顔色悪かったから。」
「そっか。顔に出ちゃってたなら誤魔化せないな。はは…。」
すると真面目な顔付きになった城田君。
「話して。新谷。」
ジワッと涙が溢れる。
私はその一言を何処かで誰かに言われるのを待っていたのかもしれない。
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