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須藤さんが私を呼んだのは買い出しを頼みたかったみたいで。
「ごめんね。新谷さん頼めるかな?」
「はい、大丈夫です。行きます。」
「助かる!紙に書き出したからお願いします。」
私は須藤さんからメモ用紙を受け取るとそそくさと靴をはいてお屋敷を出た。
外の空気を吸い込むと少しホッとした。
そして歩きながらさっき触れられた頬にそっと触れてみる。
…。
何であの時拒んでしまったのか。
あんな口実まで言って。
秀也君が私にしてくれる事が嬉しくない訳じゃ無いのに。
でも前みたいに素直に何でも受け入れられていた気持ちに少しの迷いみたいな物が生まれてきているのが私をまた不安にさせていた。
近くのスーパーに入りメモ用紙を見ながらカゴに品物を入れていく。
今日は特売日だった様で野菜もお肉もお買い得だった。
そうだ、また夕飯作ってあげよう。
帰り道にまたスーパーの前を通るので私は自分の夕飯の下見もしながら買い物を済ませお屋敷に戻った。
「須藤さん。これ買って来ました。」
「ありがとう。本当助かった!」
「冷蔵庫に入れますね。」
「良いの良いの。後はやっておくからちょっと早いけど今日はあがって。」
「え?良いんですか?」
「勿論。黒岩さんからも言われてるの。お疲れ様。」
「じゃあお言葉に甘えて。お疲れ様でした。」
須藤さんにそう言ってもらえて少し早く仕事を終えた私はロッカールームで着替えを済ませ特売日だというあのスーパーへ向かおうと外門を出た時。
「どっか行くのか?そんな急いで。」
また秀也君に会った。
秀也君は少し前からそこに立っていたかの様に落ち着いた様子で。
「今からスーパーが特売日だから夕飯の材料買いに行こうと思って。」
その時は何だか秀也君とは一緒に居られない気分になってしまっていて。
「じゃあ…また明日ね。」
ろくに会話も楽しまずに私からそう切り出していた。
「少し行きたいんだけど。家。」
「えっと…。うん。お母さん帰って来る迄なら。」
自分で切り出した言葉に自分でも冷たく感じてしまって私は了承してしまった。
そんな感じで結局私達は二人でスーパーに行き夕飯の買い物に付き合ってもらって秀也君は私の家に来る事になったのだけど。
電車の中。
二人並んで座る。
私は秀也君を隣で感じながら浮かない表情でいた。
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