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その一報が入って来たのは俺が大学で講義を受けている時だった。
ズボンのポケットに入れていたスマホが切れてはまた振動するを繰り返していて勉強に集中出来ない為、普段は休み時間にしか見ないスマホを確認した。
由紀乃さんからだ。
ん?
メッセージも入って来た。
────────。
ハァハァハァ…。
「秀也君っ!」
由紀乃さんから連絡をもらった後先輩の病院に急いで駆けつけた。
由紀乃さんと合流すると少し動揺した顔をしているのが分かった。
「ハァハァ…で、先輩は…今っ、、」
うんうんと小さく頷く由紀乃さんが息の上がった俺の背中にそっと手を添え病室へと促す。
呼吸を落ち着かせながら一歩一歩進んで行く。
そして病室の引き戸をゆっくりと開けた。
ベッドに近づく。
「秋山先輩…。俺です。秀也です。」
あまり大きな声で刺激を与えてもいけないようなそんな気がして普通の話をする時のボリュームでそして丁寧に話し掛けた。
先輩の目は以前と何も変わらず澄みきっている。
奇跡が起きたとしか言い様がない。
先輩は目を覚ました。
「俺が話し掛けた時目が少し動いた気がした。分かったのかもしれないな。」
開いた目は力が無くぼんやりとしている様子だったがそれでも諦めかけていた由紀乃さんや俺にとっては何よりも嬉しい限りだった。
先輩のご両親にも直ぐに連絡を入れて今こちらに向かっているとの事だった。
遠方に住んでいる為に少し時間が掛かっているみたいだ。
ベッドの方に由紀乃さんも近づいて。
「俊哉…私よ。由紀乃。秀也君来てくれたのよ。この三人が集まるの懐かしいわね…ね、俊哉。」
俺の隣で先輩の顔を覗き込みながら言った。
「ん?なんか今、口元が動いたかも。ニッて笑ったみたいに。」
「うん。俺も見た。笑った気がした。」
「三人が集まったから昔を思い出してるのかしら。よく笑ってたから俊哉は。」
「そうそう。先輩は根が明るくて一緒に居ると元気にもなるんだよなこっちが。」
「そうなのよね。そんな俊哉が大好きになったんだわ私。はは…本当懐かしい。」
目を細めながら嬉しそうにして話す由紀乃さんを目の当たりにして俺は確信していた。
「あ…寝ちゃった。話し掛けて少し疲れちゃったかな。」
先輩の様子を見て安堵した俺は由紀乃さんと病室を一旦出て待合室でコーヒーを買って飲む事にした。
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