羽柴莉緒

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 多分兄は、そんなことをお見通しだから反対するのだろう。  新見も莉緒の気持ちを読み取っていて、親切を特別な感情と誤解されないように断るには、どうすべきかと困っているようだ。  ましてや親友の妹に面と向かって嫌だとは言いづらいだろう。  兄が実験に託(かこつ)けて、莉緒に花婿をあてがおうとしているのではないかと疑ったのは、日ごろの会話にもある。  だって、兄の口癖はいつも…… 「莉緒、新見ばかり見ていないで、自分の歳に合う異性を見つけなさい。研究ばかりして、結婚しないんじゃないかと思うと、時々不安になるよ。新見は良い奴だが、お前もあいつも似た者同士で、研究に取りかかったら、研究室に閉じこもりっきりになって家庭どころじゃなくなるだろ」  そんな風にため息をついて莉緒の先を案じるから、憎むことなんてできないのだけれど… 「新見さん。研究が終わってお家でくつろぐときも、そんな風に紳士的なの?」 「いや、まさか。頭を使う分、家では何もしたくなくてゴロゴロしているよ。弟の奏太によく邪魔だと言われるほど、だらしない」 「じゃあ、そのだらしなさをアンディーにコピーしてください。そしたら、他の二人がよく見えるかもしれないでしょ。私のためだと思って引き受けてください。お願いします」 「う~ん。そこまで言われるなら、やってみよう。羽柴いいよな?」  新見が兄の了解を取り、莉緒の望んだ新見のアンディーが、一週間後に羽柴家に届けられることになった。  莉緒が心の中で、やった~!と歓声をあげ、だらしない姿なんて気になるはずないじゃないと思ったことなど、新見は知るよしもなかった。
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