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新見奏太
大学の夏休みを明日に控え、兄の新見研二が専攻していたのと同じ知能機械学を学ぶ新見奏太は、ワクワクしながら大型のワゴン車をヒューマン・テクノロジー《T》・ラボラトリー《L》に向かって走らせていた。
奏太は現在二十一歳で大学三年生だが、兄に勝るとも劣らぬ優秀な頭脳を評価され、兄の研究所に入ることを職員一同から所望されている。
ただ、慎重な兄とは違って好奇心が旺盛すぎる奏太は、考えるよりも先に行動に走るため失敗も多い。兄からは落ち着いてやれと小言を言われてばかりだ。
先ほどその兄の研二から、アンドロイドを一週間ばかり家で預かることになったから、搬入を手伝ってくれと電話があり、H・T・Lまでやって来た。
網膜認証システムを通り、研究室に辿りついた奏太が見たのものは、下着一枚だけを身につけて、大きな実験用のテーブルに寝かされたアンドロイドだった。
「うわ~っ。本物の皮膚みたいだな。パンツの中はどうなってるんだ?」
「奏太、お前そっちの気があるのか?」
「バカ言うなよ!俺だって研究者の卵なんだから、どこまで精密に作ってあるのか知りたいのが当たり前じゃん。あっ、でもこれ、ボディーだけは定形品で変化しなかったんだっけ」
「その個体は特別仕様だ。身体も平均サイズなら対応できる。でも、残念ながら、そこはまだ形になってない。お前の全裸をスキャンして、アンディーに入れてやれば、そっくりそのまま形成するぞ」
「勘弁して!顔でさえもコピーされるのは嫌なのに、あそこまでコピーされたら、他所へなんかやれないじゃないか」
「恥ずかしがるサイズじゃないだろう?」
「兄さんって、裏表激しすぎ!スポンサーの妹の前でそういう下ネタをかましたら、一発で嫌われるんじゃないか?試してみれば?」
反撃するかと思いきや、兄は真面目にそうだな~と考えている。
確か莉緒と言う名前だったと思うが、なにせ大学は同じでも、学部も違えば自分の研究も忙しいので、まだ会ったことがない。
まぁ、兄と彼女は十四歳も年が離れているし、親友兼スポンサーの妹に手を出すのは、何かあったときにダメージが大きすぎるから、慕われても困るだろうなと、兄に対して同情心が湧いた。
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