ハプニング

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ハプニング

 一瞬、急激なめまいと立ち眩みを覚えた後、奏太は吸い込まれるようにブラックアウトした。  意識が浮上すると共に、聞き慣れない電子音と、動かしたくても自由にならない身体の重みを感じる。  奏太は霊感があるわけでもないし、科学者として証明できないものの存在を簡単に信じたりはしないけれど、これが俗にいう金縛りだろうかとふと思った。  右手に意識を集中して動かそうとする。頭の中にかすかに瞬いたものが見えたとき、わずかに指が動いた。  動け!くそっ、右手動けったら!  思いっきり力を入れた途端、ブンと空気を切るような音とともに右手が急激に上がり、その勢いにつられて上半身が揺さぶられ、意識が完全に覚醒した。  だが瞼が開かない。一体どうしたんだ俺?不安になりつつ、今度は瞼に意識を集中して持ち上げようとする。何度かの試みで成功して目に入ったのは、上がったままの右腕だった。 「何だこれ?」  出た声に二度びっくり。奏太の声に似てはいるが、兄の研二の声だ。  状況が把握できず、辺りを見回す努力をする。だんだん身体を動かすこつを掴んできた。 「うわ~っ」  思わず叫んだのは、自分が床に崩れているのを目撃したからだ。  何だこれ?俺はここにいるのに、どうして床に俺がいる?  まだ慣れない動作で、寝かされていたテーブルから足を下ろし、バランスを取りながら意識を失っている自分の横にしゃがみ込む。そっと揺すってみるが、自分がここにいるのにこいつが目を覚ましたら、一体誰になるんだろうと恐怖に襲われた。
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