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抱き起そうとして身体を捻ったときに、左肩に近い上腕が目に入り、剥きだしのコントロールボックスが見える。
「アンディ―か⁉まさか、俺はアンディーの中にいるのか?」
なんでこんなことに?どうして?
疑問が渦を巻いた途端、耳の中にキュイ―ンと電子音が響き、カシャカシャと回路が回る音がする。その途端、奏太が自分の顔をコピーしろとアンディ―にコマンドを出す映像が頭の中に浮かび上がった。
バタンとドアが勢いよく開く音で映像が中断される。息せき切って飛び込んできたのは兄の研二だ。床に倒れた奏太と、しゃがんで奏太を抱き起そうとしているアンディ―を見比べて、驚愕の表情を浮かべた。
「奏太!どうしたんだ?アンディー、奏太を無理に起こすな。そっと寝かせてくれ」
研二が駆け寄り、奏太の顔を覗き込む。首に手を当てて脈があるのを知ると、ホッと息を吐いた。だがすぐにアンディーの方に向き直り、怖いくらいの真剣な表情で訊ねた。
「アンディー。もしかして、お前の仕業とか言わないよな?人間に危害を加えないようにプログラムはしてあるが、もしそれが破られたら、お前を抹消しなければならない」
奏太は兄が気づいてくれないことに言葉が出ないほどショックを受けた。
そうだ、自分は今アンディーの中にいて、しかも外見が兄なのだから、分からなくて当然だと自分に言い聞かせ、何とか落ちつこうとする。立ちあがった研二を目で追うと、アンディーに接続したままのコンピューターに近づいていくところだった。
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