初顔合わせ

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初顔合わせ

 年代を感じさせる鋳物の門戸の前に立ち、羽柴莉緒は深呼吸をした。  門の中に建つ洋館と同じ煉瓦でつくられた門柱のインターホンに手を伸ばす。  ピンポーン  莉緒はモニターに映る自分の顔を意識して、普段は研究で凝り固まっている表情筋に喝を入れ、何とか笑顔を浮かべた。  これから新見さんと一つ屋根の下で一週間暮らすと思うと、緊張と期待でどうにかなってしまいそうだ。  本当なら新見研二をコピーしたアンディーが羽柴家に届けらる予定だった。  莉緒とのお見合いの様子は、アンディーの内臓カメラによって音声とともに録画され、逐一新見に送信されるはずだった。  なのに、アンディーの動作や表情を含めた全てを観察したいから、莉緒に新見家の方へ来て欲しいと新見から申し入れがあったのだ。  幸いにも新見家は、祖父母の代に建てられた大きな洋館で部屋数があり、莉緒とアンディー二体に一部屋ずつ提供しても余裕があるらしい。しかも、新見の両親は海外の大学で教鞭をとっているため、他の人の目を気に掛けることなく疑似お見合いを記録できるそうだ。  新見研二が一人で住んでいるのなら、兄はイエスと言わなかっただろうけれど、新見家には莉緒と同じ大学三年生で、新見所長に匹敵するほど優秀な弟の奏太が同居しているらしい。  十一月生まれの莉緒は二年飛び級しているので今十八歳だが、奏太は二歳年上の同級生だから話もあうだろうと兄がオッケーを出したのだ。  何となく、兄のあわよくばという魂胆が透けて見えそうだが、この際、奏太がいようといまいと莉緒には関係はなく、ただ新見所長と一緒の家で生活できることが嬉しくてたまらなかった。 「莉緒ちゃん、いらっしゃい。どうぞ中へ入って」  インターホンで新見の声がしたのと同時に、ステンドグラスをはめ込んだ大きな木の扉が開き、現れた新見が石畳のアプローチを歩いて来る。  瞬間移動でもしたのかと驚いている莉緒に向かって、新見が門越しにぺこりとお辞儀をした。
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