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廊下の右手に重厚な木の枠にステンドグラスをはめた扉が見える。新見が開けると、莉緒の目にクラシカルな絨毯と上から下がった大きなシャンデリアが目に飛び込んできた。
「うわ~っ。ゴージャスだわ。昔の貴族のお屋敷みたい」
莉緒が辺りを見回して喜ぶ姿を、新見とケンディーがにこやかに見守っている。
やっぱり年上の男性って余裕があって素敵だと莉緒は思った。
¦このままケンディーをお土産としてお持ち帰りできたらいいのに……
「ここは昔でいうゲストルームなんです。隣のリビングルームにもう一体のアンディーがいるから、会話をしてみてください」
「一体だけでいいのに」
「えっ?何か言いました?」
持ち帰ることを想像していた莉緒は、ハッとわれに返り、何でもありませんと首を振った。
新見がドアを開け、ケンディーが脇へどいて莉緒に道を開ける。木枠にステンドグラスがはまった室内のドアは木製だが、玄関は木目使用の金属扉だったことに莉緒は気が付いていた。
研究者の立場から考えれば、ラボが研究しているアンドロイドが二体もいるのだから、防犯対策がばちりでないと、置いておけるはずがないことは確かだ。
きっと玄関のステンドグラスも強化ガラスを使っているに違いない。
周囲を観察しながらリビングに入ると、ブランドものであろうシャツとパンツを身に着けた高級仕様のアンディーがソファーから立ち上がって、莉緒に向かって歩いて来た。
サイドと襟足を短くカットしてトップの少し長めの髪に遊びをもたせたアップバングが、切れ長の目と頬骨の出たシャープな顔立ちを華やかに見せている。爽やかな笑顔ときびきびした動作が人と接するのに慣れている印象を与えた。
「初めまして、私は水野政人と申します。お会いできるのを楽しみにしていました」
歯切れがよく自己紹介を済ませる水野アンディーは、やり手のセールスマンといったところか。
顔以外背格好は同じなのに、ケンディーとは全く違った雰囲気を出していて、同じ型のアンドロイドだとは思えない。インプットされた人のデーターを、いかにアンディーが的確に分析して再現しているか察することができ、莉緒はその性能に感心した。
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