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「羽柴莉緒と申します。確か水野さんは兄の会社で新規開拓事業部門にいらして、有望なアドベンチャー企業を見つけて、発展に力を貸すお仕事をされているのですよね?」
「ええ。そうです。羽柴社長にはいつも鋭い指摘を頂いて、勉強させて頂いてます。新規開拓事業部門は、I T企業の情報力を活かせる分野です。これからは各企業の求めるものをリサーチして、それぞれのメリットを享受しあえる企業への橋渡しをすることで、企業の発展や生き残りの手伝いできるばかりでなく、わが社への‥‥‥」
「はぁ~っ」
ぴくりとみんなが反応して、ケンディーを見る。莉緒より先にため息をつくとはケンディーは大した度胸の持ち主だ。莉緒が笑いをかみころしていると、新見がコホンと咳をして、莉緒にソファーにかけるように促した。
「お茶をいれてくるから、莉緒ちゃん、ゆっくりしていて」
ケンディーの横を通り過ぎる時に、新見が睨みつけるのを見て、莉緒はとうとう声をあげて笑い出した。
「新見さんは、二重人格みたいね。本物のお見合いは一、二時間程度で終わっちゃうから、体裁を整えられるけれど、一週間分のデーターが入ったアンディーでは、誤魔化しがきかないみたい」
いや、その…と新見が言い訳をしようとするのを遮って、莉緒はケンディーの腕を取ると、ソファーに引っ張っていき並んで腰かけた。
「私、普段のインテリ博士も好きだけれど、素の新見ケンディーの方が、フランクにお付き合いできて楽しそう」
心無しかケンディーの顔がパッと喜びに輝いたような気がする。
兄が推す優秀な部下アンディーは、一人がこんなに面白味にかけては、もう一人も似たり寄ったりになる可能性大だ。
新見の開発に貢献することを思えばこそ、真面目に応対はするけれど、ケンディーがいてくれなかったら、正直音を上げていたかもしれない。
莉緒はこれからの一週間、ケンディーをからかうことで、未知の新見を発見できる喜びに胸を躍らせた。
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