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「俺のせいにするなよ。でも、何でまた見合いロボットなんてものを作るんだ?」
涼しい顔でカップを口に運ぶ研二を見下ろすと、兄はおもむろに顔を上げた。
湯気で曇ったシームレスの眼鏡を乗せる鼻梁の高い真っすぐな鼻と、その下に続く薄くて形の良い唇を収めた研二の顔は、それこそ整ったロボットのようだ。
繊細そうに見えるが、研究以外には無頓着な性格を表すように、伸びすぎて横に流した前髪に隠れる眼鏡をもぎ取るように外し、カッターシャツになすりつけた。
「見合いと言っても、ただの見合いじゃない。超がつく資産家やエリートたちの需要を見込んでの開発だ」
まぁ、座れと、研二が自分とは正反対の容姿を持つ奏太に目の前の席を勧める。彫が深く身体もスポーツで鍛えられた奏太は、兄よりも背も身体も大きい。立って見下ろされると余計圧迫感を感じると言われ、奏太は仕方なくテーブルを挟んだ席についた。
「開発するアンドロイドはカメレオンのように擬態化するロボットだ。しかも外見だけじゃない。カメラや音声マイクで一週間ほど依頼主を記録したデーターを元にして、その人間の思考や行動パターンを分析して身に着け、お見合いを代行するロボットなんだ」
「擬態化だって?マスクをかぶせるんじゃなくて、依頼主の顔や体型をそっくりアンドロイドがコピーして変化するってことなのか?」
「ああ。顔ならアンドロイドのアイカメラを使って、直接立体スキャンをすれば、その場でそっくりに変化する。体格までやると金がかかりすぎるから、取り換え用のSML三体のボディーを用意して、背の高さは手足のパーツでカバーする予定だ」
「顔だけでもすごいと思う。すごいけど、見合いなら生身の人間同士の方がいいんじゃないか?なんでまたロボットで代行する必要があるんだ?」
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