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「お兄ちゃん、新…アンディーは?」
勢いこんで走り込んだ足が、トトトトっと急ブレーキをかけて、上半身が前のめりになる。なぜって騒がしい莉緒に眉根を寄せて睨む兄の横には、優しい笑顔を浮かべた新見研究所長がいたからだ。
はぁ~。相変わらず美しい!
莉緒がぼぉ~っと見惚れていると、兄の叱咤が飛んできた。
「莉緒。研究所内では走らない!いつまでたっても子供なんだから。それに、アンドロイドに名前はまだないし、開発した新見が命名するのが筋だろ?アンディーなんて勝手に呼ぶな」
「え~っ。だって、アンドロイドなんて呼んだらかわいそうなくらいに人間らしいんだもの。仕事の度に違う人格になるなら、せめて親しみやすい名前をつけてあげて欲しいの」
「莉緒ちゃんの言うことはもっともだね。僕はアンディーって名前でもいいと思うよ。アンドロイドに装着した人工皮膚だって、莉緒ちゃんの研究の賜物なんだから、莉緒ちゃんにも名前をつける権利がある」
「新見さん、お兄ちゃんと違って優しいから、ほんと大好きです!」
新見がたじろぐのを見て、あっ、つい本音を言っちゃったと焦ったけれど、口から出た言葉は元には戻らない。急いで言葉を継ぐ。
「えっと、あの図々しいのですが、もう一つお願いがあるのです。アンディーをテストをするときに、新見さんだけのデーターを入れたアンディーを一体貸してください。他の二人の男性のデーターは、別のアンディーにまとめて入れて頂ければ、一人だけの時と、複数のデーターを入れた時のアンディーの動作の比較がしやすいと思います」
「えっ……僕のデーター?」
新見研二は困ったように、親友の羽柴拓己を見た。
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