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"そうだ、優樹はいつだって、簡単に何でもできてしまうし、私とは正反対の人間だ。こんな敗者の気持ちなんて分かるわけないんだ"
捨て台詞のように放った佳奈の言葉に、優樹の柔らかな表情が一瞬強ばったのは、視界が霞んでいる佳奈にもかろうじて分かった。しかし、気がつくと、優樹の表情は、すでにいつもの表情へと戻っていた。
全てを言い切って、それでもなお、何か言葉をぶつけようとして言葉探しをしている佳奈に対して、優樹はようやく口を開いた。
「諦められるくらいの、その程度の覚悟の夢なら、最初から目指さないほうがいいかもね」
その程度と言われて、優樹へと牙を剥こうと思った佳奈であったが、優樹が話をしているその目は本気になっているのをみて動揺した。優樹は、優しくて温厚な性格な持ち主であったため、佳奈は優樹のこの表情を見るのは初めてだった。
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