希望晴

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佳奈には、優樹の言った一言は、優樹の人生の縮図を表しているようなそんな気がした。佳奈には、優樹も1人の人間であり葛藤を抱えて生きていることを実感し、なぜだか心の奥底で嬉しい気持ちになった。しかし、それを遥かに上回るように自分のことしか見れていなくて優樹のことを考えてあげられてなかった自分が情けなく、優樹に申し訳ないと思う気持ちに駆られた。 「ごめん…なさぃ」 何とか声を絞り出し、最後まで言葉にしようと思った佳奈であったが、その思いも虚しく咽び泣きへと変わっていた。 佳奈の視界はすでにぼやけていて優樹の表情を判別することはできなかった。佳奈には、すでに泣くことへの恥ずかしさなどなかった。もうどうにでもなれとばかりに、見えていない優樹の方を見たまま泣き続けた。
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