8人が本棚に入れています
本棚に追加
2.フェイクフラワーの色彩変化
今の気持ちに真っ正直に向き合って、
頭の中は、欺川へどう復讐してやるかでいっぱいである、あんなことやこんなことを妄想する、そして気づけば妄想は肥大化して嵐となる。
「欺川さ〜ん、いま寝てたでしょ?」
隣に座る、欺川 幸がうとうと揺らめく顔を上げてこちらを見やり、ハッとする。
「寝てない! 瞑想してただけ.......。」
「本当に? 本当に〜?」
畳み掛ける為、攻め手を更に振るっていく。
「実は、寝てました.......。」
「正直でよろしい、先生に言われたくなかったら、今後はウソをつかないで!」
「ひっひぇー、先生には言わないで.......。 今後はウソつかないから.......!」
「勝った」
にやりと顔に笑みをこぼす。
までを、頭に浮かべて登校を続ける。
妄想の醍醐味は実際にそうなるかは別として、考えるだけならタダであるところ。
だから、また更に考える、自己満の幸せに満足する。
後々何回もしていると、間茂は自分の足が通常よりも遅めになっていることに気づいた。
それはそれと共通する昨日の嘘を過ぎらせる。
「遅刻10分前だよ」という偽り。
まんまと騙された、自分。
必死に走る姿。
部分部分が頭によぎっていく。
そしてそのうち、
「あれ、なんか不安になってきた.......」
冷や汗をかきはじめる、足が小走りになる。
何分か妄想していたことを次第に後悔していく。
間茂の足は猛速となっていた。
時間をあまり意識しない間茂も、流石に遅刻という明確なピンチには焦りを感じていた。
遠回り気味なのは相変わらずであるが、自身で感じれるのは間茂としては珍しい。
走る、走り続ける間茂の顔は次第に赤みを帯びていく。
酸素不足の全身は思考を鈍らせる。
遅刻への危機感。
そして考えられる、
もうひとつの危険に絞られる。
登校時の欺川 幸の小悪魔な笑顔。
顔の整った彼女の笑顔は傍から見れば、きっと楽しそうに、とても綺麗に笑っている。
花のように、綺麗に、美しく。
しかし、間茂からすればその花には毒があるウラがある。
欺川の毒はウソであり。
そのウソは間茂に対しては実質オモテとして使用される。
実際に自分が話している欺川がオモテとして、その内に潜むウラ。
そんなウラは他の人に対しては、オモテとして使われる。
こんなイマイチおかしな現象は、現存する嘘つきの花によく似ていた。
それは間茂にとって恐怖に近いものだった。
最初のコメントを投稿しよう!