2.フェイクフラワーの色彩変化

1/1
前へ
/6ページ
次へ

2.フェイクフラワーの色彩変化

今の気持ちに真っ正直に向き合って、 頭の中は、欺川(せがわ)へどう復讐してやるかでいっぱいである、あんなことやこんなことを妄想する、そして気づけば妄想は肥大化して嵐となる。 「欺川さ〜ん、いま寝てたでしょ?」 隣に座る、欺川 幸(せがわ さち)がうとうと揺らめく顔を上げてこちらを見やり、ハッとする。 「寝てない! 瞑想してただけ.......。」 「本当に? 本当に〜?」 畳み掛ける為、攻め手を更に振るっていく。 「実は、寝てました.......。」 「正直でよろしい、先生に言われたくなかったら、今後はウソをつかないで!」 「ひっひぇー、先生には言わないで.......。 今後はウソつかないから.......!」 「勝った」 にやりと顔に笑みをこぼす。 までを、頭に浮かべて登校を続ける。 妄想の醍醐味は実際にそうなるかは別として、考えるだけならタダであるところ。 だから、また更に考える、自己満の幸せに満足する。 後々何回もしていると、間茂(まも)は自分の足が通常よりも遅めになっていることに気づいた。 それはそれと共通する昨日の嘘を過ぎらせる。 「遅刻10分前だよ」という偽り。 まんまと騙された、自分。 必死に走る姿。 部分部分が頭によぎっていく。 そしてそのうち、 「あれ、なんか不安になってきた.......」 冷や汗をかきはじめる、足が小走りになる。 何分か妄想していたことを次第に後悔していく。 間茂の足は猛速となっていた。 時間をあまり意識しない間茂も、流石に遅刻という明確なピンチには焦りを感じていた。 遠回り気味なのは相変わらずであるが、自身で感じれるのは間茂としては珍しい。 走る、走り続ける間茂の顔は次第に赤みを帯びていく。 酸素不足の全身は思考を鈍らせる。 遅刻への危機感。 そして考えられる、 もうひとつの危険に絞られる。 登校時の欺川 幸の小悪魔な笑顔。 顔の整った彼女の笑顔は傍から見れば、きっと楽しそうに、とても綺麗に笑っている。 花のように、綺麗に、美しく。 しかし、間茂からすればその花には毒があるウラがある。 欺川の毒はウソであり。 そのウソは間茂に対しては実質オモテとして使用される。 実際に自分が話している欺川がオモテとして、その内に潜むウラ。 そんなウラは他の人に対しては、オモテとして使われる。 こんなイマイチおかしな現象は、現存する嘘つきの花によく似ていた。 それは間茂にとって恐怖に近いものだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加