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3.誰かの為になる言ノ葉性質
「おはよう」
賑わう教室のなか、椅子が擦る音の近く。
隣の彼女は挨拶をした。
それに気づいた隣の男は、反応もせずただ彼女の顔をみて思う。
どこか寂しそうだなと。
息を切らして、飛び込んだ校内。
それと同時に鳴るチャイムを聞いて、間茂は安堵する。
「危なかっ、た.......まさ、かギリギリとは」
心臓の鼓動を感じる程の身体からは、息遣いの荒い声が呼吸と混ざって発せられ、重い身体に少しの無理として、自身の教室へと向かわせる。
足元を見ながら階段を上がって、ゆっくり一歩刻んでいく。
時期に少し上がるといつも通りに聞こえてくるたくさんの声。
下を見ながらでも分かる、一層大きな雑音に耳を傾けて歩く。
汗を拭いながら、大きな雑音の前に間茂は足を止める。
目の前の扉を自身で開き、見知った光景に目を向ける。
その瞬間目に入ったのは、欺川 幸の姿だった。
窓側の隅、ひとつの席を取り囲むように立っている人達。
その間から見える彼女。
それをみて、ため息をこぼす。
「また群れてるよ.......」
いやいやながらも近づいていく足には嫌気のさした言葉が付く。
欺川 幸の隣は間茂 真である。
つまり、あの集団の近くまでどうしたって行かなければならない。
気持ちは嫌ながらも、ある程度近づいて、間茂は自分自身の席へと目を向ける。
そして気づく更なる難題、モンスターの存在。
不意に「げげっ」と小さく声が出る。
楽しそうに話しているモンスターの顔にも気づき、申し訳なさで自分の席だと言い出せず、立ち尽くす間茂。
ホームルームはもうすぐ、少し待てば何をしないでもどこかに行くことを思い出した間茂は、立ち尽くす足を少し後ろに、待つ選択に決めた。
数秒経った、ちょっとずつただ立っているのに気まずさを覚え始める。
ちらちらと自身の席を見やったり、周りを見たり、壁掛け時計を確認したり。
目のやり場を探しながら、疲れた体を休ませたいと気持ちを焦らす。
そんな時はより一層、周りの声が耳に届く。
たわいもない世間話、誰かへの悪口、恋バナらしきもの等、聞こえるものは様々。
そこに、自分に関するものはない、聞こえては来なかった、だから少しはマシな気持ちで立てていたのだが、不意に自身の名前が聞こえた。
気持ちはざわめき、雑音の中の声を掻き分け自身の名前を言った方向を向く、そこはモンスターの居る方向。
欺川 幸のいる集団の周辺。
「加藤くん、間茂くんが後ろで待ってるよ」
「あぁごめん間茂、すぐ席どくな」
二人の声がこちらに声をかける。
油断していた間茂は少し反応が遅れてから、「大丈夫、ありがとう」と言いながら、席へと着いて。
「おはよう」
瞬間、そんな声が耳に聞こえた気がした。
周りを見ると、隣で座る欺川の顔が笑った顔が、振り向きざま、こちらを一瞬みているように感じた。
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