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賑わう街中から少し外れにある、薄暗い路地裏。 いつもなら柄の悪いチンピラ共の溜まり場と化しているその場所だが、今夜は少し違っていた。 辺りは静まり返り、微かに漂う鉄の匂い。 只一人、蒼髪の少年が壁に背を預け、佇んでいる。 「蓮!」 路地の反対側から、誰かが少年の名を呼びながらこちらへ駆け寄ってくる。 「一人で突っ走るな!危ないだろ!」 どうやら彼は、少年の勝手な行動に腹をたてている様子だ。 「うるさいな」 名前を呼ばれた少年、『蓮』は、乱れていた前髪を雑にかきあげ、気だるげにそう返事をした。 「単独行動常習犯の師匠にだけは、言われたくないんだけど?」 整った顔立ちに、眉間にシワを寄せ上目使いで師匠を睨み付ける蓮。 その生意気な態度を目の当たりにした『師匠』は、強ばっていた顔を更に強ばらせ、 「あ…?どこに族の残党が隠れてやがるかわからねーだろうが。兎に角俺の側から離れんな。」 そう言い、乱暴に蓮の手首を掴むと、強引に元来た道へ引き返そうとする。 蓮は納得いかない表情ではあったものの、この顔をしている師匠の機嫌が今どれ程ヤバイかを熟知している為、反抗はせずされるがままに歩きだす。 前に一度、師匠の機嫌が悪いときに蓮が反抗的な態度をとった際、無言で一時間程天井から全裸で吊るされた事があった…。 そんな思い出を思い出しながら、蓮は歩きながら師匠の後ろ姿を見つめる。 ネコッ毛の癖ッ毛。炎の様な赤髪。 背は蓮より10センチ程高く、右耳には蓮と同じピアスが一つ。 きっと、黙っていればかなりのイケメンなのだろう。 だか蓮は知っている…自己中でだらしがなくて、時間にルーズな上に気分屋、金銭感覚は破滅的、その上、ドS。 蓮が師匠と出会ったのは、二年前。 その日は体調が悪く、喧嘩中に大怪我を負ってしまい、目が覚めると師匠に拾われていた。 最初の印象は、赤髪の紳士 今の印象とは天と地程の差がある。 だが蓮は、この男の事を嫌いではない。 むしろ、師匠のいない世界など自分の生きる意味が無いのと同じだと思っているほどである。 蓮の手首を強く掴み路地を歩く師匠を、少し睨み付け、気づかれない程度にため息をつく。 先ほどの抗争で、敵に殴られた脇腹がズキズキと悲鳴をあげている。 さっきまでは、不意をつかれた自分自身にイラついていたのだが、今は痛みの方が強い。 正直、普通なら立っているのもやっとな状態なのだが、師匠が強く手首を引くせいで、もう痛みを我慢するしかない。 それからまた暫く路地を歩き、やっとの事で師匠の愛車まで到着、倒れ混むように助手席に座る蓮。 シートを限界まで倒し、シャツのボタンを胸元まで開ける。 久々に暴れたせいか、睡魔が蓮を襲う。 「ッはぁ…。師匠の…あほ」 強烈な睡魔で頭が回らないまま、口が勝手に話し出す。 「蓮…。そんな風に無防備だと、悪い男に喰われるぞ」
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