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毎年、誕生日って来るよな。
まぁ当たり前なんだけど。
誕生日は皆に等しくあるものだ。
けれど世界中の皆が幸せな誕生日を迎えているかと言えばそんなことはない。
俺にとって誕生日は、あまりいい思い出のないものだった。
両親が祝ってくれないとか、そういう暗い話じゃなく。
なんと言うか――――
―――そう、運が悪い。
幼い頃から誕生日に限って大怪我したり、プレゼントのオモチャに初期不良が見つかったり、お菓子作りが好きな母親の手作りケーキがその日だけ成功しなかったり。
近所の犬に誕生日の日だけ異常に避けられたり。
俺にハッピーバースデーとか言う奴もれなく全員嫌いになる。(でも言って欲しい。)
たぶん、呪われているのだと俺は誕生日が近付く度に戦々恐々としていた。
――そんな、高3に上がったばかりの春。
俺、小牧 好郎は誕生日に屋上に呼び出された。
嫌なドキドキと予感を抱えて扉を開けたら、真っ青な空と古く錆びた柵の前に男がいる。
目の前で呼び出されたのだからこいつが居ても驚きはない。
女子かな?というわくわくさえ持たせてくれなかったこの男を俺はよく知ってる。
性格は寡黙で。
感情の起伏は僅かなもの。
容姿は一度も染めたことない黒髪と、それなりに整った顔、背も高い。
全然喋らないくせに女子人気が高いのは、顔がいいからじゃない。
背だ。
背が高いからだ。
だって俺とお前、比べて格差があるならそれくらいしかないからだ。
こんな田舎の偏差値底辺の高校に通っているんだから頭の出来だって一緒。
いや、性格なら俺の方がいい。
だから俺がお前よりモテないことがおかしい。
あぁ、結局女子は身長だ。身長差に惹かれるのだ。
「妬みのオーラを放ってないで早く来てくれ。寒い。」
「あ?お前が屋上指定したんだろうが。それに妬んでないからな。」
昔から寒いのが苦手なくせになんで風当たりが強いとこ選ぶんだ。
「話って何?さっさと戻ろーぜ。駿河達がさー…何か面白いゲーム見つけたって騒いでて」
「…牧ちゃん。」
なんだよ。牧ちゃん言うな。
いつになく真剣な顔をする親友にドキリとする。
…親友。
この柳瀬 理貴は小学校から一緒で、幼馴染であり俺が最も信頼している親友だ。
俺の背中によく知らない星座みたいな黒子があることも理貴しか知らないし、理貴の耳の裏に昔の傷痕があることも俺しか知らない。くらいの仲。
そんな親友から一体何を言われるのか全く予想がつかない。
…まさか。
俺の知らない間に彼女でも出来たか?
と、理貴の顔を疑うように見てもびっくりするくらいの無表情で俺を見ているだけで。
いくら幼馴染でもわかるわけない。
聞きたくないような聞きたいようなで、じりじり攻める俺にしびれを切らして理貴が近付いてくる。
苛つくなら最初から入り口付近に居ろ。
目の前まで来たものの、理貴はすぐに口を開かなかった。
一緒に居ても面と向かって話すってあんまない。だから真正面から見る理貴はちょっと珍しい。
「な、なんだよ。」
「…俺さ。」
理貴は、初めて見る顔してた。
「牧ちゃんのこと、一度も友達だと思ったことないから。」
え。
「…ずっと―――大嫌いだった。」
は。
言うだけ言って理貴はもう俺なんて見ることもなく屋上を出ていった。
「…はあぁぁぁ!?」
もしかして、俺が叫ぶのわかってて屋上にしたのかあいつ、とかハッしたけどどうでもいい。
友達じゃない?大嫌い?
どの口で言ってんの?
理解できない。
あいつは理解出来てんのか。
いや…つか俺、誕生日なんですけど?
どういう神経で人の誕生日にそんなこと言う?
「あー、そっか嫌いだからか!」
ポンっと手を打った。
納得、納得。
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