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お風呂を出ると時刻はまだ九時半だ。二人とも夜に働いているので職業柄眠くない。テレビは色々チャンネルを代えたがそんなに面白そうなのをやってない。
「最上階にバーがあるみたい。行ってみない?」
このホテルは三十階建てだ。最上階は夜景が綺麗だろう。
「いいよ。僕もワインの酔いが少し醒めた。カクテル一杯くらいだったら飲める」
マリアは嬉しそうに頷く。二人で洋服に着替えて部屋を出た。エレベーターに乗って三十階のボタンを押す。
バーは薄暗くて夜景が見える大きな窓沿いにカウンター席があった。夜景を見ながらアルコールが飲めるようになっているようだ。
「私、ジンライム」
「僕はカシスオレンジにするよ」
店員に頼むと正面の夜景を見た。部屋からもスカイツリーが見えたのだがここからも見える。青く光っている。その他にもビルや車の灯り。キラキラ、キラキラ美しい。宿泊券をくれたお客さんに感謝だ。
飲み物が来た。マリアはライムグリーンの色をしたグラスを口につける。
「私、奥さんと別居して理来くんと住もうかなー」
それは無理だ。理来のマンションはワンルームだし、何より店長にバレたら『シリウス』に居られなくなってしまう。
「なに言ってんだよ。店長に怒られちゃうよ」
「そうだよねー」
マリアは口紅を塗っただけだが横顔が艶っぽい。物憂げに夜景を見ている姿を見ていると抱きしめたい欲望に駆られる。
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