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 今日も『シリウス』は混んでいる。カウンターもボックス席も満席だ。平日だからスーツを着た人が多い。バタバタと忙しくしているとミッシェルが「ポッキーお願い」と理来に声を掛けた。ミッシェルはミニのスーツ姿だ。 「今日はポッキーがよく出るよ」 「お客さんと向かい合って一本のポッキーを端から食べるゲームをしてるの。いっぱい食べたほうが勝ち。負けたら勝った人の質問に答えなくちゃいけないの」 「それってキスしちゃうじゃないか」 「そうだよー。理来くんはマリアが誰かとキスするの嫌でしょう」  ミッシェルが考えを見透かす。なんで分かったのだろう。でもどうせ辞める店だ。もう誤魔化す必要はない。 「マリアが大事なんだ」 「うん、うん、正直でいいね。さっき店長が怒ってたの聞いちゃったの。二人で何処に行ったの?」 「水族館に行ってシティホテルに泊まったんだ」  ミッシェルはぱあっと顔を明るくする。友達がデートしたことが嬉しいらしい。にまっと笑うと「いいなー」と言った。  九時のショータイムの時間になった。先週は天使と悪魔のショーだったが今週は六人がミュージカルっぽいことをやる。歌ったり踊ったりするのだ。マリアはナンバーワンなので主役だ。ショーは皆んなが出るわけではないが売れっ子はだいたい抜擢される。今週はミッシェルもショーに出て踊る。
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