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 理来は厨房に戻って洗い物をした。マリアが入って来て興奮したように喋り始めた。 「靖春、今日カッコよかったと思わない?婚約者をここで振るなんてやるね」 「ああ、僕もそう思ってた。僕もここを辞めるときマリアが好きだって皆んなに宣言する」 「えっ、理来くん辞めちゃうの?」 「デートがバレちゃったんだよ」  マリアは目を大きく見開くと涙を滲ませた。 「それで何処で働くの?噂が広まるからこの辺りでは無理だよ」 「都内で探そうと思ってる」  マリアは理来に抱き着いた。香水のいい匂いが鼻孔を刺激する。 「私も理来くんに付いていく」  それは無理だろう。店長だって指名がナンバーワンのマリアを辞めさせてくれないだろうし、しかもマリアは結婚している。奥さんが別れることを許してくれるか分からない。 「そうだ、私に店を出させてくれるって人が居たじゃない。その人に連絡を取ってみるから転職は待っててよ」  そうか。その人に高円寺のライブハウスで店がやりたいって言ってみよう。実は理来の両親は死亡保険金を数千万残してくれている。そのお金を賭けてみようか。マリアとなら流行る店が経営出来るような気がする。
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