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 店員は四人掛けの席を指した。理来は椅子に腰掛ける。マリアは向かいのソファーだ。だいぶ酔っているようで眠そうな目をしている。 「水族館に行ったり連れ回しちゃったから疲れただろう」 「シティホテルに行きたいって言ったのは私じゃない」 「今日は無理だけど、日曜日に朝までゆっくりしようか?これからのことをゆっくり話したい」 「うん、うん、都内でパブをやるのね」  理来は大きく頷いた。でもマリアの奥さんには説明しなければいけない。 「マリアの奥さんに会えるかな?」 「あの(ひと)は私がお金のためにニューハーフを無理してやっていると思ってるの。私の心は男だって信じてるの。そんなことないのに」  そうなんだ。奥さんはマリアを男として愛しているのかな。それはややこしい。理来は肩をあげた。身体の関係があるのか知りたいが隣の席に聞こえたら困る。 「マリアの気持は?奥さんが好き?」 「私は理来くんが好き。奥さんとは一緒に暮らしてるから情はあるけど、私の心は女だもの」  理来は嬉しい。マリアは男だが本気で好きだ。 「込み入った話は日曜日にしよう。来週からは『シリウス』に行けないからね。二人だけで飲もうよ」 「あれっ?理来くん飲めるの?」 「ビール一杯くらいしか飲めないよ」  理来はそう言ってお味噌汁に手を伸ばす。マリアは枝豆をぷつっと口に入れた。  ファミレスを出てマリアのマンションに向かう。もう道順は覚えているのだが一応ナビをセットした。マリアはこくっこくっと首を上げ下げしている。かなり眠たそうだ。  軽自動車はマリアの家の前に着いた。 「着いたよ。また明日」 「うん、あー、眠い」  マリアはそう言って欠伸を噛み殺した。
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