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 日曜日になった。理来はワンルームの部屋で目覚める。白い壁に白い天井、カーテンは遮光カーテンでグリーンだ。一カ月前に買ったばかりでまだ畳み皺がついている。  時計を見ると十時だった。昨日三時くらいまで起きていたから七時間は寝ている。理来はインスタントコーヒーを淹れた。今日が『シリウス』に出勤する最後の日だ。  夕方になって仕入れの買い物にスーパーへ行く。新しい厨房の人が見付かるまでウエイターが料理をするらしい。料理といっても切ったり盛り付けたり、それくらいしかしないから誰でも出来るだろう。  籠に鶏肉やチョコレートを入れる。なぜだか胸が苦しくなる。このスーパーでニューハーフパブの仕入れをするのは最後か。  少し早めに店に行く。冷蔵庫やキッチンを少し掃除してから辞めたい。立つ鳥跡を濁さずだ。  ウエイターが出勤して来た。厨房を覗いて「あっ、理来くん今日までだっけ」と言う。 「うん、だから掃除に早く来た。そうそう、唐揚げの下ごしらえの仕方を教えとくよ」 「あ、じゃあ、メモしとく」  ウエイターは棚からノートを取る。理来は丁寧にしょうがを擦ることから教えた。ウエイターは困ったように言う。 「一口大って言われても分からない。実際に作ってみてくれ」 「分かった。今日の分をこれから作るから見ててくれ。揚げるときにまた呼ぶよ」  理来はジップロップを出して包丁で切った鶏肉を入れた。そこに調味料を加える。 「だいたい分かったかな?」 「ああ、後は揚げ方だな。明日から俺が作るなんて心配だよ」 「すぐにコツを掴むよ」  理来はそう言って口角をあげた。
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