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木村理来はフィリピンの人が働いているニューハーフパブで働いている。こんなところで働くのは親が心配しそうだが理来の両親は理来が高校生のとき事故で亡くなった。現在年齢は二十五歳。お祖母ちゃんの助けもあって大学を卒業して広告代理店に就職したのだが職場の環境に馴染めず退職した。その後に親が残してくれたお金でオーストラリアに行き、ニューハーフのショーを始めて見た。心がぱあっと晴れてとても刺激的で楽しかった。だから日本に戻ってからこの仕事に就いたのだ。店の名前は『シリウス』だ。理来が任されているのは厨房だ。専門の大学へ行っていたので調理師の資格を持っているがこのパブはそんなに手の込んだものは作らない。せいぜい唐揚げをあげるくらいで後は殆ど盛り付けだ。
理来は六時半に厨房に入る。突き出しを作っておかなければいけない。簡単なものだが一応来た人には小皿に料理を入れて出すことにしている。料理といっても漬物や柿の種などだが。
『シリウス』は五十人くらい客が入れる大型のパブだ。ボックス席とカウンター席があって真ん中に一段高くステージがある。ニューハーフは四十人くらい居る。代わり替わりに休むがこの辺りにあるニューハーフパブでは一番の規模だ。天井にはミラーボールが二つ回って店内に光が散りばめられているが、その他のライトがはなっているのはパブにしては明るい照明だ。キャストの容姿に自信があるからだ。
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