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序
広大な荒れ地を取り囲むのは、まるで天まで昇る竜の背骨のような長い長い道。
どれほどの時間と労力が使われたのだろうか。大昔に造られた石積みの壁は、隣国との境として国の端から端まで続いている。
そしてそこがジミンの仕事場だった。
空の果てに吸い込まれていくように続く長い一本道は、隣の国からの侵略を防ぐ砦であり、見張り台だった。
壁の上には雨が降ることもなければ、風がそよりと吹くこともない。虫も鳥もいない。
赤い旗の立った折り返し地点まで来たら回れ右。またもとの場所まで歩く。
壁をはさんで中は荒れ地、外は緑の生い茂る森。どんなに見わたしてみても、ここには壁と森と荒れ地しかない。
森から来る敵がいないかを見張るための国境警備兵。それがジミンに与えられた仕事だ。
十二歳になった男の子はみんな国境に送られる。一回の任期は二年。その後も二年おきにやってくる。
もし敵を見つけたらすぐさま首からぶら下げた笛を吹けばいい。それだけの仕事だ。そうはいっても、ジミンの見張る区域は一日で五往復するのがやっとの距離だ。
笛を吹いたところで仲間に届くかどうかあやしい。けれど、ここ数年笛の音が聞こえたことはないと聞いていたのでそれほど心配はしていなかった。
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